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[グループG ブラジル×北朝鮮]涙
これ程までに軍服が似合うブラジル代表は初めてだ。歴代でもミリタリー・ルックが似合うブラジル代表No.1だろう。ドゥンガ軍曹に率いられたスクワッド・カナリアが今宵、遂に出撃する。ドゥンガが試合前、「いいかお前ら、セレソンでW杯を戦うことに比べれば、地獄で業火に焼かれたほうが遥かにマシだ」とかおっしゃっていたとしても何ら不思議ではない。
試合はスロー・ペースでスタートした。ブラジル相手に北朝鮮は当然のことながら、あえて表記すれば5-4――1というような布陣で臨む。オランダ相手に日本もこういった布陣で臨む他はない。いかに1ポイントをもぎとるかが、北朝鮮にとっても、日本にとっても至上命題となる。
スタンドには若干だが北朝鮮の応援団の姿があった。あれはどういった人達なのだろう。どういった人達なのか、というのは、当然のことながら北朝鮮の一般市民に遠く南アフリカまでやってくる財力などあるはずないし、やはり政府が派遣した応援団なのだろうか。しかし全員男性で、女性は一人もいなかった。北朝鮮がスポーツのビッグイベントに派遣するのは「喜び組」が通例だったが、治安が悪いということで全員男性に変えたのかもしれない。
などとお茶らけたことを言っている場合ではない。試合はとてもシリアスなものだった。国家斉唱の際にチョン・テセは泣いていた。W杯の舞台を前に在日朝鮮人として生きてきたこれまでの人生を振り返っていたのかもしれないし、純粋にただW杯の舞台に感動したのかもしれない。
そして先制ゴールを奪ったマイコンも泣いていた。やはりW杯で負けることは許されないセレソンである。プレッシャーは相当のものだったのだろう。次戦以降にはコートジボワール、ポルトガルが控えている。そして目の前の相手は初戦をものにした韓国、日本と同じ北朝鮮だ。侮ることはできない。
最後にブラジル相手にゴールを挙げたチ・ヨンナムも泣いていた。彼の涙はピュアなサッカー選手としての涙だった。圧倒的で巨大なブラジル、サッカー選手なら少年から大人まで誰もが憧れるブラジル代表から、自分がゴールを奪った。それも、W杯の舞台で。ゴールを奪ってからピッチを去るまで、夢のような時間を過ごしたに違いない。そしてチ・ソンナムは人生最後の日までこのゴールを反芻し続けるだろう。
人間が流す涙の向こう側は、どこまでも深く、果てしなく広い。
(本田千尋=文)
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