[スポーツライター] 金子 達仁
【スポーツニッポン】「有能か否か」最優先の選考に好感
日本代表の次期監督選びが難航している。目下のところ、スペインのビクトル・フェルナンデスが本命視されているようだが、彼にとって、日本代表監督の座は数ある選択肢のうちの一つにすぎない。契約書にサインがなされるまでは、どうなるかわからないと見ておいた方がいいだろう。
W杯以降、最初のテストマッチとなるパラグアイ戦まで1カ月を切っていることもあり、まだ監督が決まっていないことに不安を覚える方は少なくないと思う。だが、わたし個人としては今回の“遅れ”を好意的に解釈したいと考えている。今回の代表監督選びは、過去のそれとは根本的にアプローチを異としているからである。
ファルカンを唯一の例外として、これまで日本代表監督を選ぶうえで大きな割合を占めていたのは「日本を理解しているか否か」だった。日本は異質であるという、日本人自身の思い込みがそうさせてきたのだろうが、監督選びの際に最優先されるべき「有能か否か」という点よりも、日本で過ごした時間の方が重視されてしまってきた。国際経験の少ない日本人監督の抜擢(ばってき)はまさにそれゆえだし、オフト、ジーコ、オシムといった外国人監督にはいずれも日本での生活経験があった。日本とは無縁だったトルシエにしても、名古屋で指揮をとっていたベンゲルの推薦が大きかった。
だが、そもそもベンゲルは、オフトは、オシムは、最初から日本という国を理解していたのだろうか。理解していたから、彼らは結果を残すことができたのだろうか。違う。彼らは有能だから結果を残すことができたのである。日本を理解していったのは、結果を残すうえでの過程であり、理解していたがゆえに結果を残せたわけではない。そこを、日本人は、日本サッカー協会は誤解してしまっていた。
幸いにして、今回の監督選びは、長く日本サッカー協会がとらわれてきた「日本を理解しているか否か」という呪縛(じゅばく)から完全に解き放たれている。フェルナンデスにしても、名前が挙がったその他の候補にしても、判断の基準となっているのが「有能か否か」あるいは「実績があるか否か」になっていることは明確に見て取れた。これならば、待てる。我慢できる。
フェルナンデスに関しては、ミドルクラスの戦力しかないチームでチャンピオンクラスを苦しめるマエストロという印象がある。W杯における日本の立ち位置を考えると適役だが、挑戦を受ける側となるアジアの戦いでは苦しむかもしれない。ともあれ、日本サッカー協会は面白い人材に目をつけた、というのが個人的な感想である。
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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