[スポーツライター] 金子 達仁
【スポーツニッポン】W杯躍進でJ途中流出加速する皮肉
仮にW杯で代表チームが惨敗するようなことがあれば、Jリーグの観客動員は間違いなく影響を受ける。日本サッカーの危機を叫ぶ声も出てくる。だが、それでも問題はないとわたしは考えていた。
W杯の時期のみ、サッカーに熱狂する人たちがいる一方で、週末ごとの試合、自分たちの愛するチームの戦いぶりに一喜一憂する人たちの数は、間違いなく以前より増えている。長野県では、JFLに昇格した松本山雅を支援する地元銀行に、今年だけで100億円を超える預金が集まった。日本代表の惨敗は、いわゆる浮遊層を遠ざける結果になるかもしれない。けれども、核は揺らがない。それどころか、確実に太くなってきてもいる。だから、日本代表が負けても大丈夫だと思っていた。
事態は、予想とは正反対の方向に進んでいる。
決勝トーナメント進出を果たしたことで、再開してしばらくの間、Jリーグにはかなりの浮遊層が群がることだろう。悪いことではない。いまはコアな存在になったファンの多くも、かつては浮遊層だった。だが、すでにコアな存在になっていたファンにとって、Jリーグの現状は手放しに喜べるものなのか。つまり、次々と主力選手が海外に引き抜かれていく状況を、たとえば川崎Fのサポーターはどのように受け止めているのか。
ドイツ大会の惨敗後、日本選手の世界的評価は地に落ちてしまった。実際の実力よりはるかに低い評価しか受けられなくなってしまった。日本選手が海外に移籍するためには、代理人の積極的な営業が必要だった。
ところが、ここにきて状況は一変した。予想を覆す日本代表の決勝トーナメント進出は、スカウトたちの目を再び日本選手へと向けさせた。円高ユーロ安にも関(かか)わらず起こったこの流れは、最短でも次のW杯までは続くことが予想される。W杯ドイツ大会で始まった日本選手の“株安”が、南アフリカまでは続いたように、である。
日本選手の海外流出は、加速する。それも、シーズン中の流出が、加速する。現行の日程でJが開催されている限り、ファンは愛するチームがシーズン途中に戦力ダウンしていく様を見せつけられることになる。
核が、ダメージを受ける。
シーズン前の移籍であれば、フロントが対策を立てることもできる。ファンも気持ちを切り替えられる。もし野球のWBCが6月に開催され、小笠原、阿部、坂本らがシーズン中にメジャーに引き抜かれたら、それでも巨人ファンは後半戦に熱狂できるだろうか。
プロ野球は、そんなカレンダーを放置するだろうか。
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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