[スポーツライター] 金子 達仁

  • 2010年7月12日

【スポーツニッポン】日本が目指すべきスペインのボール保持力

 初の決勝進出を決めたスペインのサッカーを、日本のメディアは「美しいパス・サッカー」であると称賛している。スペインに留学し、スペインのサッカーを愛してきた人間としては、悪い気持ちはしない。ただ、今大会のスペインのやっているサッカーが美しいとはわたしには思えない。パス・サッカーだとも思えない。バルセロナとの比較論において、そう思う。

 確かに、スイスとの初戦におけるスペインは素晴らしかった。美しくもあり、パス・サッカーでもあった。W杯史上に残る名勝負だった、とも思う。だが、ここで黒星を喫したことで、以後のスペインは完全におかしくなってしまった。ほぼバルセロナのようだったチームは、バルセロナの選手がいるだけのチームに成り下がってしまった。パラグアイ戦で底を打ち、ドイツ戦ではかなり復調の気配を見せたものの、いい時のバルセロナを10とすれば、せいぜい4ぐらいのレベルだとわたしは見ている。

 いい時のバルセロナと悪い時のバルセロナ。その違いは、ボールタッチ数になって表れる。いい時のバルセロナは、ダイレクトでポンポンとボールを回す。悪いバイオリズムに陥ると、ドリブルが増える。2タッチ以下のプレーが大半を占めるのがいい時のバルセロナだとしたら、3タッチ、4タッチ以上のプレーが多いバルセロナは、スランプにあると言っていい。

 準決勝のスペイン代表には、印象的なダイレクトのプレーがほとんどなかった。準々決勝での決勝ゴールは、イニエスタのドリブルから生まれたものだった。高いボール・ポゼッションは、ここまでのところ得点力に直結していない。6試合で7得点という数字が、すべてを物語っている。

 だが、それでもスペインは決勝に進出することができた。その最大の要因が高いボール・ポゼッションにあるのもまた事実である。ボールを保持している限り、相手が攻撃してくることはない。決して多くの決定機を生み出しているとはいえない今大会のスペインだが、相手に与えた決定機の数はもっと少ない。6試合で失点2、決勝トーナメントに入ってからは3試合無失点という数字は、ボール・ポゼッションという概念が持つもう一つの側面を教えてくれる。

 スペインは、美しいパス・サッカーによって勝ち進んできたのではない。相手の攻撃時間を減らすことによって接戦を制してきた。ボール・ポゼッションには、二重の効能がある、チームがスランプに陥っても、運だけに頼らなくてもいいのだと教えてくれる。

 日本が目指すべき道でもある、とわたしは思う。

[スポーツライター] 金子 達仁



コメントなし

コメントを投稿


書籍紹介

負けない自分になるための32のリーダーの習慣
澤 穂希 /幻冬舎
目標は「言葉」にすれば、必ず実現する。ブレずに強い心で戦い続けるための習慣。成功を引き寄せる、「有言実行」のメンタル術。

僕は自分が見たことしか信じない
内田 篤人/幻冬舎
彼はその端正な外見だけではない。男らしい一面をもっている。誰よりも優しい心を持っている。そして、だれよりもサッカーに対して真摯だ。

不器用なもんで。
金子 達仁 /扶桑社
『渡り鳥シリーズ』、『仁義なき戦い』など映画に出演し、『昔の名前で出ています』、『熱き心に』といった数々のヒット曲を生んできた小林旭。金子達仁が鮮やかに描き出す一冊。

サッカーの見方は1日で変えられる
木崎 伸也/東洋経済新報社
ボールを追うのは3流、フォーメーションを論じるのは2流。 では、「本当のプロ」はどこを見ているのか?今日からできる「プロの観戦術」を初公開!

バルセロナが最強なのは必然である グアルディオラが受け継いだ戦術フィロソフィー
オスカル・P・カノ・モレノ /カンゼン
 “美学”と“効率”が両立されている バルセロナのサッカーの本質に迫る一冊

心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣
心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣
長谷部誠/幻冬舎
『心は鍛えるものではなく、整えるものだ。いかなる時も安定した心を備えることが、 常に力と結果を出せる秘訣だ。自分自身に打ち勝てない人間が、ピッチで勝てるわけがない。』

タイアップ

オーダーメイドシリコンリストバンド BANDIA
スポーツビジネスオンライン
soccerking