[スポーツライター] 金子 達仁
【スポーツニッポン】最高ではなかったが冬の大会は面白い
W杯も残り2試合となった。20年ぶりに大会を現場ではなくテレビで観戦することとなり、臨場感を味わえなくなった代償として、すべての試合をフルタイムで見ることができた。94年大会以降、移動や取材制限の問題もあって半数以上の試合をダイジェストでしか見ていないことを思えば、これはこれで大いに楽しめる経験だった。
大会全般を通じて感じたのは、「冬のW杯は面白い」ということ。参加国数が増加することによって、欧米のベテラン・ジャーナリストからは試合内容の低下が嘆かれてきたW杯だったが、酷暑というサッカーにとって最悪の敵が排除されたことによって、“気が遠くなるほど退屈な試合”は激減した。今後、W杯を招致しようとする国にとっては、暑さ対策をいかにアピールするかということが争点の一つにもなってくるだろう。
ただ、最高のW杯にはならなかった。1次リーグのスペイン対スイスがあまりにも素晴らしい試合だったため、「これは82年大会を上回る最高の大会になるのでは」と思ったのだが、その後はいささかしりつぼみになってしまった感がある。
理由の一つとして挙げられるのは、やはり、ブブゼラの存在だろう。南アフリカ特有のスタイルだということはわかるが、欧米でプレーする選手にとっては騒音以外の何物でもない。
声援ならば発奮し、ブーイングならば萎縮もするだろうが、どんな状況にあっても一つの音しか出すことのできないブブゼラは、選手に何の影響をもたらすこともなかった。
南アフリカの人たちは同じ大陸の代表に少なからず思い入れがあったはずだが、その気持ちがスタジアムを覆い、対戦相手を威嚇することはほとんどなかった。ガーナを除くアフリカ勢が軒並み1次リーグで消えてしまったのも、スタジアムの空気が無関係とは思えない。
ボールの名称がこんなにも話題になった大会もなかった。78年大会、従来の亀甲式デザインに別れを告げた“タンゴ”の登場もセンセーショナルだったが、ジャブラニはGKのあり方を根本的に変えてしまった。
キャッチは、パンチに優る。パンチは非常手段。地球上でプレーしているGKの圧倒的多数は、そう教育されてきた。だが、ジャブラニはGKにキャッチを許さないボールだった。こんなにもGKによる美しいダイビング・キャッチのない大会は過去になかった。
ちなみに、わたしにとって今大会のNo・1GKはナイジェリアのエニェアマ。次点がスイスのベナリオとアルジェリアのムボリである。ただ、GKのプレーを楽しみにする一部のマニアにとって、今大会が史上最悪のW杯であったことは間違いない。(
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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