[スポーツライター] 金子 達仁
【スポーツニッポン】「王者対決」制するのはスペイン
ここ20年、ドイツは常に挑戦者だった。結果として勝ち上がることはあっても、それはどこか驚きを伴うものだった。大会前から強さを認められ、期待通りの内容で勝ち上がったのは、90年のイタリア大会が最後になる。
今大会のドイツも、上位進出は予想されていたものの、優勝候補の最右翼と見なされる存在ではなかった。おそらく、そのことはほかならぬ選手自身が強く自覚していたことだろう。2年前の欧州選手権決勝で、彼らはスペインに完敗している。バイエルン、シュツットガルトの選手たちは、バルセロナを相手に手も足も出ない惨敗を喫した経験を持っている。上には上がいるということを、彼らは身をもって思い知らされている。
だが、ここにきてドイツに対する評価は急速に変わりつつある。レーブ監督でさえ「予想していなかった」というアルゼンチン戦の圧勝によって、彼らは優勝候補の一角に躍り出た。20年ぶりに、ドイツ人以外からも優勝を期待されるチームへと変貌(へんぼう)を遂げた。
挑戦者としての立場しか知らない若い選手たちは、生まれて初めて、王者としてW杯を戦うことになった。
ここ20年、スペインは常に実力を高く評価されるチームだった。優勝候補としてあげる声が実力ほどには高まらなかったのは、ひとえに、彼らが“W杯で勝ったことのない国”だったからである。いままで勝ったことがない。だから今回も勝てない。スペインの評価を貶(おとし)めていたのは、ただそれだけだった。
だが、彼らは2年前の欧州選手権で勝った。一度は手にしたことのあるタイトルだったとはいえ、地元開催ではない大会で獲得した勝利は、スペイン・サッカーが切望し、それでいながら手が届かないでいた立場に、ついに到達したことを意味していた。
王者としての立場である。
強いチームと、W杯で勝ったことのある強いチームとでは、対戦相手の心構えがまるで違う。前者と戦う弱者は、自分たちにもチャンスがあると考えるが、後者と戦う弱者は、恐れがまず先に立つ。ブラジルがうんざりするほど直面してきたタイプの試合を、今大会でのスペインは彼らの歴史上初めて経験した。W杯で勝ったことがないにも関(かか)わらず、経験した。
それでも、彼らは勝ってきた。ブラジルほどには挑戦される立場に慣れていなかったため、不器用なところは多々あったが、それでも、勝ってきた。
だから、ドイツ対スペインの決戦は、ベルトを獲得したばかりの王者と、防衛を積み重ねてきた王者との統一王座決定戦である。図式としては、74年大会の決勝、オランダ対西ドイツが最も近いかもしれない。
勝つのはどっちか。わたしは、スペインを推す。
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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