[スポーツライター] 金子 達仁
- コメント(2)
- 2010年6月28日
【スポーツニッポン】スペインの醜いサッカーに嫌悪感
もし“大会期間中に最も変貌(へんぼう)したチーム選手権”なるものが開催されていたら、前日までダントツの首位を走っていたのが日本だった。
だが、1次リーグ最終日に逆転劇は起きた。スペインによってうっちゃられた。
敗れたとはいえ、スイスとの初戦を戦ったスペインは、限りなくバルセロナに近いチームだった。82年のブラジルにも似て、結果だけでなく、内容で世界を酔わせることのできるチームだった。
チリと戦ったスペインに、バルセロナの香りは微塵(みじん)もなかった。似ていたのは、ペナルティーエリア外での反則でPKをもらい、外したPKを「GKが先に動いた」と蹴り直させてもらうなど、ホームタウン・デシジョンの連発で薄汚く勝ち上がった82年W杯スペイン大会のスペイン代表だった。大会期間中に信じられないほどポジティブに変貌したのが日本だったとしたら、スペインは呆(あき)れ果てるほどネガティブに変質してしまった。
メンバーが代わったわけではない。ホンジュラス戦を休んだイニエスタも帰って来た。言ってみれば、メッシがいないだけのバルセロナのようなチームだったというのに、展開されたのはバルセロナでは見たこともないような退屈なサッカーだった。28年ぶりに、わたしはスペインのサッカーに嫌悪感を覚えてしまった。
彼らは、旅の恥をかき捨てた。
自分たちのやっているサッカーが、カンプノウであればブーイングを通り越して白いハンカチを振られる質のものだということを、選手たちはよくわかっていたはずである。にもかかわらず、彼らは平然と時間稼ぎに走った。どれほどあくどく、醜いサッカーをやったところで、聞こえてくるのはブブゼラの音だけだからである。
喜び、怒り、祈り、呪(のろ)い。本来はスタジアムに満ちているさまざまな感情を、ブブゼラは一つの音で塗りつぶしてしまう。そのことが、スペインの選手たちを恐ろしく傲慢(ごうまん)な存在に変えた。こいつらの前だったら、何をやってもかまわない。何をやったってわからない。
彼らは、開催国への敬意を捨てたのだ。
たった1つの試合が、チームを大きく変えることがある。醜かったスペインが、再び美しさを取り戻す可能性がないとはいえない。けれども、スペインが82年のブラジルとなる可能性は、もはや完全に失われた。勝敗を超え、時代を超えて愛されるチームとなる可能性を、自らドブに捨てた。スペインを愛してきた者として、それがとにかく残念である。
コメント(2)
- T2010年6月28日 7:34 PM
スペイン=バルサとなっている概念はすてるべきでしょうね。バルサの選手がほとんどなのに不思議ですね。
今ある意味心揺さぶられるチームは、チリじゃないでしょうか。
- tuka2010年7月3日 6:29 PM
スペインが酷いと言う意見には同意しますが、
この試合は、スペインだけが悪かったのでしょうか?
というのも、僕には、チリも途中で試合を投げたように見えました。
その辺についてはどうでしょう。
でも、スペインの選手もやる気はあると思うんですけど
根本的に、グループリーグが苦手なんじゃないかと思ってきました。
潜在的に相手を舐めてるから、本当の意味でのモチベーションが上がらないのかなと。
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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