[スポーツライター] 金子 達仁
【スポーツニッポン】何も感じられない錆びたフランス
なんだ、このフランスは?
伝説的なストライカー、フォンテーヌを擁した時代を知らないわたしにとって、若きプラティニとともに颯爽(さっそう)と登場した78年大会以降のフランスは、常に魅力的なチームだった。ドイツのような逞(たくま)しさ、イタリアのようなしたたかさがあったわけではない。時にモロく、時に悲劇的で、しかし、彼らは常に美しかった。
その伝統が、ドブに捨てられようとしている。
1次リーグで敗退した日韓大会でのフランスには、同情の余地が大いにあった。ジダンをはじめとする主力選手は過密日程で疲れ果てており、コンディションは明らかに最悪だった。常に挑戦する立場だった側から、初めて挑戦を受ける側に回ったのも影響していただろう。王の衣装を、彼らはまだ着こなせていなかった。
4年後のドイツ大会で、フランスは再び挑戦者の立場に戻っていた。しかも、彼らにはチームを一つにする大きな目標があった。
ジダンのために。
右傾化、移民排斥運動に怯(おび)えてきたフランスの有色人種にとって、アルジェリア系移民の子であるジダンは、スポーツの枠を超えた英雄である。その英雄が、現役を退こうとしている。彼の花道を飾りたい。最高の形で送り出したい。その思いが、決して前評判の高くなかったチームを決勝にまで導いたのだ。
だが、南アフリカでのフランスから、わたしはなにも感じ取ることができないでいる。プラティニの時代のような美しさがあるわけでも、ジダンの時代のような結束力があるわけでもない。なんのために戦っているのか。そう聞きたくなるほど、今大会のフランスは不可思議なチームになってしまっている。
やはり、出場にいたる道のりに問題があったのか。
他国ばかりでなく、自国からもわき上がったW杯プレーオフ、アンリのハンドに対する怒りは、選手たちから「国民のために」という思いをはぎ取ってしまったのかもしれない。情熱の希薄なその戦いぶりは、気迫にだけは満ちたW杯という大会の中にあって、圧倒的に異質だった。ピカピカに磨かれた食器の中に、一つだけ交じった錆(さ)びたスプーンのように異質だった。
カメルーンのルグエン監督に続き、フランスのドメネク監督も、わたしにとっては大いなる謎となった。彼らは、何をしたかったのか。なぜ、あんなチームになってしまったのか。大会後に漏れ聞こえてくるであろう、釈明への興味が募る。
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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