[スポーツライター] 金子 達仁

【スポーツニッポン】開幕戦ドローが招いた南アの惨敗

 スペイン対スイスは、ベストゲームだった。今大会の、ではない。わたしにとっては86年ブラジル対フランス以来の、初戦ということに限っていうならば、82年ブラジル対ソ連以来のW杯ベストゲームだった。

 ベルベットのように滑らかで、シェークスピアのように悲劇的だった一戦を満喫したあとでは、どんな試合であっても色あせて見えるのはわかりきったこと。正直、ウルグアイ対南アフリカが始まる時間まで目を開けているのはいささか苦痛でもあった。

 だが、試合が始まれば眠気も消えた。アルジェリア対スロベニアのように、あるいは日本対カメルーンを見た当事者以外の人のように、退屈からくる睡魔に襲われることはなかった。

 サッカーの奥深さが、眠気を吹き飛ばしてくれた。

 初戦で南アフリカと引き分けたメキシコと比較すれば、ウルグアイの力はやや劣るかもしれない。ただ、彼らにはメキシコにはなかったものがあった。

 南アフリカへの警戒心である。

 W杯開催国史上最弱とも言われていた南アフリカは、メキシコにとって“勝たなければならない相手”だった。勝ち点3を奪うのは当たり前。できることならば大量の得点もほしい。そんな試合だったのだ。

 だが、メキシコはなかなかゴールを奪えなかった。勝ち点3を取ることだけが目標であれば、あわてる必要のない状況で、勝ち点3以上のものを望んでいた彼らは慌てた。守備のバランスを崩した。そこを、カウンター一発で衝(つ)かれた。

 ウルグアイは、勝ち点3だけを狙ってきた。メキシコの戦いぶりを教訓とし、最大の敬意をもって南アフリカをたたき潰(つぶ)しにいった。一瞬足りとも相手カウンターに対する警戒は緩めず、断じて先制点は与えないというサッカーをやった。

 こうなると、南アフリカは苦しい。ラッキーパンチは、相手のスキがなければ決まりにくい。そして、ラッキーパンチが当たらなければ、彼らの勝算はまずない。にもかかわらず、ウルグアイはスキを見せなかった。スキなど見せてたまるかという空気を、露骨なまでに発してきた。

 だから、ウルグアイの勝利と南アフリカの敗戦は、開幕戦のドローに原因がある。前評判の高かったメキシコの失点がなければ、W杯優勝経験のある古豪ウルグアイが傲慢(ごうまん)なサッカーをやった可能性は高い。南アフリカを熱狂させたあの引き分けが、今回の惨敗を生んだのである。

[スポーツライター] 金子 達仁



コメント(1)

qingmu2010年6月21日 4:45 PM 

本日、日本のW杯史上、最も感動的な敗北 の文章を見させて頂きました。
ひねくれものの私なので、まずは否定から入ります。

本当ですか!?
私は98年の1次リーグの方が心を動かされましたけど。

ただし、点を取られたあとの攻める姿勢、これは岡田監督が残り時間のリスクを持ってしても
攻撃の選手を交代枠の2枠目、3枠目のカードとして一気に切って、選手にメッセージを送ったこともありますが、
もしかして岡田采配を含めての部分で感動されたのでしょうか?

ならば、どうしてこうも岡田監督の采配が劇的に変わることができたのだろうか?
金子さんの洞察力ならば書き加えることができると思うのですが、一体どうしたのでしょうか?
やはりW杯開始前のふがいない言動や采配を含めて手を抜いていた部分が大きいのでしょうか?

と、ここまで金子さんのことを徹底的に批判しておりますが、私も岡田監督には幻滅していたひとりです。
ただ、それ以上に幻滅していたのは日本協会に対して。
世界と戦う上で必要なのは世界を知っている監督、これは日本の戦力を世界と戦えるように仕上げることも必要ですが、
そのためには世界のサッカーがどんな流れに行っているのかをきちんと知っている人物を据える必要があるのにそれをしなかった。

岡田監督は自身の能力の中で十分やっていると思う。
でも、彼の能力では世界では勝てない。そう思っていました。
だからこそ、いまは岡田監督に今回のW杯を任せたのであれば好きにやればいい。
結果がでなけりゃ批判がより強くなるだけですけど、見ている方の気持ちを動かす采配ができることはそうそうない。
命までは取られないぜ!と開き直れた部分が大きいのでしょうか。

だからこそ、そうゆう状態をのほほんと見ている日本協会はもっと責められるべき。そう思っています。
しかも本日の報道では今W杯で1次リーグを突破するようなら岡田監督に続投要請をするだと!?

ふざけるな!

私は今でも日本協会の連中は総辞任するべきだと思っています。
例え、1次リーグを突破して、さらにベスト8に入ったとしても。

今回の日本チームは世界で戦う日本のスタイルを見つけたかもしれないけど
さらに上に行くためにどうしたら良いのか?
今回、さらに日本が活躍するようなら日本の監督をやりたい!と思う世界を知っている1流どころの監督が出てくるかもしれない。
逆にやりたいと思っている監督に、あなたなら日本チームをどのようにしたゆきたいのか?と面接することだってできるかもしれない。

でも、いまの協会のメンツではダメ。
もっと若返って世界と戦ってきた人たちにこれからの日本サッカーの将来を任せられるようにならないと。

デンマーク戦は、はでに散るような日本チームなのかもしれない。
アルゼンチン戦でコテンパンにやられた韓国チームのように。

でも、デンマーク戦での戦い方がチームとして機能するなら。
岡田監督の考える戦術や試合の進め方ができるようなら。
どうしてそのようにチームがまとまることができたのか。それを見つけることができるようだとおもしろいと思うんですけど。
私はキーワードは中田寿、そして2006年のチームが無残に崩壊した原因のひとつでもある小野、高原、稲本だと思うんですが・・・
もしかしたら小野を選ばなかったことが今回のチームの躍進のひとつなのかもしれない。
私が応援する清水エスパするの快進撃を目のあたりにするとそう思わざるを得ない。
小野は自分が王様になれるチームでしか輝くことができない。

私は正直デンマーク戦は期待していません。
オシム氏が危惧していた体力面や、カメルーン戦の勝利やオランダ戦での善戦が悪い方向に選手の気持ちを動かしていないだろうか?
世界でもやれる!という気持ちが天狗になっていないだろうか?
チームとして機能することが今回の日本チームの優位点であるけれども、それがなければダメなチーム。優位性が欠点でもある。
そしてそれを活かすも殺すも相手のデンマークではなく、ファンやマスコミ、そして選手たちではないだろうか。

マスコミはそれが仕事だから仕方ないと割り切れますが、お馬鹿な日本協会の連中が馬鹿な言動で選手や岡田監督を惑わさなければいいのですが・・・
岡田監督を批判してきたマスコミはどうして今回、それとは逆な結果を出してきている岡田ジャパンなのかきっちり検証する必要があるのではないでしょうか。
それが真のライターであると思います。

それはそうと、金子さんは日本協会を批判してましたでしょうか?
私はいままでのところ日本協会を痛烈に批判する文章を見ていないのですが・・
調べているところが悪いんですかね。
それであれば謝らせて頂きます。

2006年の惨敗の原因を見出したレポートには納得する部分が多かったです。
2010年のチーム状況をどのようにレポートするか楽しみにしています。
金子さんの言葉として。
岡田さんに頭をさげる写真を載せたレポートなんてしゃれっけあっていいんじゃないでしょうか。

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