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【スポーツニッポン】ドログバ得た「象」に2段階の効果
ニュージーランドでもあれだけやれる。北朝鮮だってブラジルからゴールを奪える。どれほど貧弱で古くさい武器であっても、持つ者がそこに信を置いていれば、岩をも穿(うが)つことがある。防具は手にした日本の、信頼に値する武器とはなんなのか。あらためて考えさせられた大会5日目だった。
さて、大会ごとに代表チームのニックネームを募集する国とは違い、アフリカの国々の多くは長く親しまれてきた愛称で呼ばれている。ガーナであれば“ブラック・スターズ”。カメルーンは“不屈のライオン”。そして、コートジボワールならば“エレファンツ”である。
名は体を表すというが、なるほど、ガーナのサッカーは彗星(すいせい)のように素早く、先進的だった。カメルーンは、ライオンはライオンでも動物園のライオンだった。あれほど怠惰で、あれほど無秩序なチームは、肥大化した最近のW杯を振り返ってみても皆無ではないか。国民がルグエン監督に激怒し、欧米のメディアが「今大会のワーストゲーム」と酷評するのもよくわかる。
そして、コートジボワールは、確かに象だった。
彼らは黒い星よりも土着的で、怠惰な獅子よりはるかに真摯(しんし)だった。目の前にいる象が、遠くに見える星よりもはるかに大きく見えるように、個々のサイズではガーナよりもずいぶんと大きく見えた。崩されたわけでもないセンタリングで最も警戒すべきセンターフォワードをフリーにするような愚挙もなかった。
しかも、出場が危ぶまれていたエースが帰って来た。
絶対的な切り札の存在は、2段階の効果を発揮することがある。北朝鮮がそうだった。“これが自分たちの切り札だ”という形を何回か見せつけたことで、後半のブラジルは徹底して鄭大世(チョン・テセ)を封じ込めにきた。
結果、他の選手が空いた。
この日、コートジボワールのFWとして先発したジェルビーニョは、単独で相手を粉砕できるレベルの選手ではなかった。しかし、ドログバが帰ってくれば話は違う。相手の意識は絶対的エースに集中し、他の選手がルーズになる時間が必ずや生まれてくる。
ポルトガルもいいチームだった。C・ロナウドは他の選手とはいささか次元が違うことも改めてわかった。それでも、ほぼベストの布陣で戦ったポルトガルよりも、途中までドログバ抜きでも互角にわたり合ったコートジボワールにわたしは強い印象を受けた。
この組、もしブラジルが消えるようなことがあっても、それは決して番狂わせではない。
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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