[スポーツライター] 金子 達仁
- コメント(2)
- 2010年6月16日
【スポーツニッポン】ガーナの勝利がアフリカ勢に火をつけた
南アフリカは逃げきれなかった。ナイジェリアは力負けだった。アルジェリアは自滅した。どのチームも予想以上の戦いぶりを見せながら、しかし、ここまでのアフリカ勢は勝てずにいた。観客の圧倒的な声援に後押しされながら、勝てずにいた。
W杯南アフリカ大会は、南アフリカにとってのW杯であると同時に、アフリカ大陸全体にとってのW杯でもある。勝てていない、勝たなければという重圧は、ガーナの選手にも重くのしかかっていたはずである。
そこで、勝った。眩(まばゆ)いばかりの輝きを放ち、かつセルビアの抵抗に大いに苦しめられた末に、勝った。生みの苦しみを痛いほどに味わった上で、勝った。
暗雲は、吹っ飛んだ。カメルーンとの対戦を控えた日本人の立場からすれば、吹っ飛んでしまった。なかなか開かずにいた狂熱の宴の蓋(ふた)は、ギャンのPKによって取り払われた。取り払われてしまった。
W杯は、“流れ”の大会でもある。一つ番狂わせが起これば意外な結果が頻発し、一つゴールラッシュが起きればそこに続くチームが現れる。美しく、気高くさえあったガーナの勝利は、後に「アフリカに火をつけた勝利」として位置づけられるのかもしれない。
勝てずにいたとはいえ、ここまでのアフリカ勢の戦いぶりは、明らかに4年前とは違っていた。どこか遠慮があり、どこか心許(もと)なさそうだったドイツでの戦いとは違い、自分たちはやれる、相手がどこだろうとやれないはずがないという自信はうかがえていた。足りないのは、勝ち点3という結果だけだった。
だから、ガーナの勝利は、アフリカ大陸にとって待望の勝利でもあった。呪縛(じゅばく)は、解かれた。母なる大陸に戻り、すでに足かせのとれていたアフリカ勢は、ガーナに続けとばかり一気に勢いづくことだろう。
アフリカのW杯が、ついに開幕したのだ。
セルビアのゴールネットが揺れた瞬間に沸き起こった歓声は、大陸全土から沸き上がった鬨(かちどき)の声でもあった。久しく言われ続けてきた「21世紀はアフリカの時代になる」という言葉が、予想ではなく現実に一歩近づいた瞬間だった。“黒い星たち(ガーナ代表の愛称)”が、太陽にも負けないまばゆさで大陸を照らした瞬間だった。
82年のアルジェリア、90年のカメルーン、94年のナイジェリアなど、過去のW杯で印象的な試合をしたアフリカのチームは少なくない。けれども、この日ガーナが見せたサッカーは、W杯史上、最もアフリカ的魅力にあふれたサッカーだったといえる。このサッカーが継続されるようであれば、スペインだろうがブラジルだろうが安全ではない。
コメント(2)
- aa2010年6月16日 10:54 PM
そのガーナに勝った日本はやっぱすごいよね
- miyazawa2010年6月18日 7:25 AM
いつも楽しく記事を読ませていただいています。
僕は意見は全く別で、
アフリカ勢はいつもの勢いもなく、運も味方につけきれていないように思います。
「初のアフリカ大会で」という重圧が、
いつもの彼らの良い意味での、気まぐれさの上にのしかかっているように思います。
そして日本代表に対する意見では納得できないです。
「弱者の姿勢」に気付き、そこで結果を出したことは、
大きな前進だと思います。
また興味深い記事をお願いします。
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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