[スポーツライター] 金子 達仁
【スポーツニッポン】「日本もいつか」と思わされる米の精神力
開幕2日目、たった5試合が終わっただけで断定してしまうのは性急にすぎるかもしれない。けれども、ほぼ間違いないのでは、という気もする。
冬のW杯は面白い。冬のW杯はレベルが高い。
ここのところ、W杯は世界最大の大会ではあっても最高の大会ではない、と考えるようになっていたが、思えば、過去32年間のW杯は夏のW杯だった。日本などごく限られた国をのぞくと、普段はサッカーをやっていない時期に行われたW杯だった。
だから退屈だったのか。だからレベルの低い試合が多かったのか。だとしたら、今大会はW杯の魅力を再発見させてくれる大会となる。少なくとも、ここまでのところは退屈な根性比べ、体力比べの試合にはお目にかかっていない。
ただ、アメリカの精神力は見事だった。
優勝候補に先制点を許す。それも、セットプレーからドカンという失点ではなく、完全に崩された形からの失点を許す。挑戦する立場のチームからすれば、大変なショックである。「ああ、やっぱり」というあきらめがチームを覆い、できるはずの反撃もできなくなる。普通のチームならそうなる。
だが、アメリカはもはや普通のチームではなかった。序盤に怒濤(どとう)の猛攻を受け、かつ先制点を許してもなお、彼らは闘争心を失わなかった。自分たちの持つ武器への自信を失わなかった。逆転ゴールを許した途端、傍目(はため)にもはっきりと意気消沈してしまった日本とはそこが決定的に違っていた。
20年前、久しぶりにW杯の舞台に帰って来た際のアメリカは、褒めるところを探すのが難しいぐらいのチームだった。しかし、以来5大会にわたって積み重ねてきた経験と自信は、イングランドを相手にしても揺らがないところにまで到達していた。12年前、少なくとも笑いものにはならずにW杯デビューを果たした国の人間としては、「日本もいつか」と強く思わされる試合でもあった。
イングランドについては……まあ心配することもあるまい。彼らが悪かったのではない。アメリカがいいチームだったということだ。ただ、開幕戦で致命的なミスを犯したGKが立ち直ることは難しい。82年のブラジルがそのことを証明してしまっている。カペッロ監督はどうするか。
開幕からの5試合を見て、もう一つわかったことがある。ここまでのところ、準備試合の内容と結果は、嫌になるぐらい本番に反映されている。冬のW杯は、チームの本質を突如(とつじょ)として変化させることはない大会なのかもしれない。
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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