[スポーツライター] 金子 達仁
【スポーツニッポン】横への布石で王者崩したインテル
サッカーの世界では、よく「ロジカル」という言葉を使う。単純に和訳すれば「論理的」という意味になるのだが、そもそも、論理的なサッカーとはどのようなものなのか。
わたしの考える「論理的なサッカー」とは、「プレーの意図を第三者に説明することのできるサッカー」である。バルセロナの若年層を教える指導者たちは、4対2のいわゆる「鬼回し」をする際、必ず選手たちに問いかけるという。
「この状況で一番いいパスはどんなパスか」
おそらく、ほとんどの日本人選手も答えることができるはずだ。2人の守備役の間を通すパス。いわゆる門を通すパス。だが、こう畳みかけられて、即答できる人間はどれだけいるだろうか。
「なぜそのパスは一番いいパスなのか」
門を通すパスが一番いいパスだということは、大概の日本人も感覚的に理解はしている。だが、「一挙に2人の選手を置き去りにできるから」と論理的に説明できるかどうかとなると、いささか心もとない部分がある。マラドーナほどの才能がないにもかかわらず、マラドーナのような感覚的なサッカーに頼っているのが日本人だとしたら、マラドーナに負けない才能の持ち主たちが、自分たちのプレーを説明できるサッカーをやろうとしているのがバルセロナだと言っていい。
そして、バルセロナを倒すための論理を構築していたのが、インテルのモウリーニョ監督だった。
1次リーグでは歯が立たなかったバルサを相手に、イタリア王者は徹底した縦への速さをちらつかせた。ボールを奪えば、すぐに前線のミリトへ。何度オフサイドの網にかかっても、同じことを繰り返した。
もちろん、その形で点が取れればそれに越したことはない。だが、インテルはしたたかにも、次の策も用意していた。相手に強く刻み込んだ縦への印象は、それ自体が危険だっただけではなく、布石でもあったのだ。
つまり、横への。
前半30分、ペナルティーエリア内でミリトにボールが入った瞬間、バルセロナの選手たちはミリトしか見ていなかった。それまでインテルのやってきたサッカーが、バルサの視界を狭窄(きょうさく)させていたのである。横にいたスナイダーにボールがはたかれた瞬間、決着はついた。
ミラノまで1000キロにも及ぶ距離をバスで移動してきたバルサの体調が万全ではなかった、という面は確かにある。しかし、この日のインテルが演じた大番狂わせが、サッカー史に残るほど論理的なものだったのも、また事実である。
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[スポーツライター] 金子 達仁- Tatsuhito Kaneko
- 1966年1月26日、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社に入社。『スマッシュ』『サッカーダイジェスト』編集部勤務を経て、95年にフリーとなる。著書に「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」「敗因と」「泣き虫」などがある。
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