スポーツ感動体験
心に花束を
初めての子育ては想像以上に大変だった。母になった責任とAさんの真面目な性格が、知らず知らずに心に負担をかけていた。
育児ノイローゼ。
何もかもが嫌になり、絶望のどん底に落ちてしまったという。
Aさんの気持ちを救ったのが、託児所内にあった”ママさんのエアロビクス教室”だった。13年前の話である。
「少しでもストレス発散できればと思ってやってみたら、気持ちがスカッとしたんです」
それから週に2回、教室に通うようになり、子供が保育園に入ると同時にスポーツクラブのエアロビクスコースに入会した。
このときはまだ”趣味程度”のレベルだった。
「3年くらいしてから、仲間から地元のコンテストに出ようと誘われたんです。そうしたら一次審査をパスしちゃって」
Aさんがエアロビに目覚めた瞬間である。
だが真剣にやればやるほど上手くできないことが腹立たしい。インストラクターによる指導が終わったあとでも、自主練する日々が続いた。
なぜそこまでするのか。
全日本エアロビクスコンテスト北陸大会に出場するためだ。
今回の第20回大会は、個人の部と新設されたエアマラソンの部にエントリーした。
個人の部は、プッシュアップ系、サポート系、ジャンプ系、バランス・柔軟系の4つのグループから、最低でも1個づつ最大12個の技を入れることができる。そして技術点、芸術点、難度点の合計が最も高い人が優勝となる。
Aさんは3位となり、全国大会までは届かなかった。
エアマラソンの部はいかに楽しく踊るかが評価のポイントだ。
「実は大会前に太ももが肉離れを起こして、治ったばかりだったんです。久しぶりに踊れるとあってウキウキしていました」
ケガの箇所をテーピングで固めていたとはいえ、うれしいという気持ちは演技にも現れる。
「踊っているときは楽しかったですね」
見事ベスト5に入り、全国大会出場を決めた。
しかし、この演技がAさんの生涯最高のパフォーマンスとなる。
全国大会を終えてから3カ月後、股関節に水がたまる重傷を負ってしまう。
医師から「このまま続ければ人工関節になります」と言われて、競技を引退することになった。
「ケガなので仕方ないです。悔いはありません。楽しむ程度なら続けてもいいと言われているので、気楽にやっていますよ」
Aさんの心を救ってくれたエアロビクス。今度は自分がエアロビクスのために何ができるか模索中だ。
(滝沢康英=文)
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