スポーツ感動体験
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- 2010年5月14日
アイスホッケーのある生活
自分の部屋は他人にはお見せできない、とMさんは笑う。
息子がプレーする写真で埋まっているから。
2人の息子がプレーするアイスホッケーにはずいぶん投資したが、惜しくはない。
お金では得られない楽しさと感動を与えてくれたから。
Mさん自身がスポーツをすることはなかった。
しかし15年ほど前に東京から冬季五輪開催を控えた故郷長野にUターンした時、長男と5歳下の次男がそろってアイスホッケーを選んだことが、Mさんの人生を一変させた。
息子たちは一生懸命にスティックを握りリンクを滑っている。
決して広くはないリンクの中で12人のプレイヤーがパックをめぐって争う熱は、たちまちMさんの心を捉え、夫婦の休日は息子とアイスホッケーに費やされていった。
県外の大学に進学してからも息子を追いかける日々は終わらなかった。
片道2時間以上かけて大学リーグ戦が行われる会場まで車を走らせる。
会場には同じような親馬鹿たちがいる。
みんな、生でアイスホッケーを観る楽しさに取り憑かれてしまっている。
みんな、息子が無心に打ち込む姿を見る楽しさから抜け出せずにいる。
北海道の親御さんに比べれば、と語るMさんが息子の試合を見られなかったことはほとんどない。
おかげでアイスホッケーによって成長する息子を見ることができた。
おっとりとした性格の長男が学生最後のシーズンを終える頃には、味方を守るためなら先頭に立って相手と争うことも厭わないファイターに変貌していた。
対照的に勝気で暴れん坊だった次男からは、自分たち両親だけでなく控えのチームメイトたちも含めた周囲に対する感謝の気持ちと、責任感が感じられるようになっていた。
3年生最後の試合が終わった時のことだった。
長男は泣いていた。
勝ったことに泣いていた。
悔し涙を流すところは何度か見てきたMさんにとって、初めて見る勝ったことに涙する息子の姿だった。
そんな息子に育ててくれたチームメイトたちに、アイスホッケーに、Mさんはただ感謝した。
今、Mさんは寂しさに包まれつつある。
来春次男が卒業してしまえば、アイスホッケーをプレーする姿を追いかけてきた日々も終わってしまう。
代わりになる楽しみは、すぐには見つかりそうもない。
だから今年も息子がプレーする試合は、全て観に行く。
今までと同じように車で2時間かけて会場まで駆けつけ、同じような情熱をもった親たちと一緒に代わりのきかない楽しみを味わい尽くすのだ。
(小林浩宣=文)
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