スポーツ感動体験
空手スイッチ
海音ちゃんは小学二年生になる女の子。胴着を着れば黄帯びの空手家へと変身する。
きっかけは両親の教育方針だ。
「礼儀正しい思いやりのある子に育ってほしい」そんな思いから兄妹を連れて道場見学へと行った。
「空手は本来相手を倒すものではなく、危険から身を守るための武道だと聞いていたので、ぜひやらせたいと思ったんです」とお母さん。
しかし大人たちの戦う姿を見て海音ちゃんは泣き出してしまい、お兄ちゃんだけが空手をはじめることとなった。
このとき海音ちゃんは悔しさでいっぱいだった。
「お兄ちゃんができて自分ができないわけがない」
負けん気の強い女の子は勇気を振り絞り、半年後に道場へ通うことを決心した。
だけどつまらない。しまいには「何帯になったら辞めていい?」と親に聞く始末。「この子に空手は向かなそう」とお母さんが思っていたら、道場長から大会に出ないかと声をかけられた。
海音ちゃんは首を横に振ったけど、「実力を試せる機会だから参加したら」とお父さんからのアドバイスを受け、渋々京都府の空手大会に出場した。
試合中、あまり声は出ていなかったけど、そこは強気の海音ちゃん。手数が圧倒的に多く、見事準優勝してしまった。
「楽しい!」
この結果が自信となり、海音ちゃんの空手スイッチがオンになった。続く剛柔会関西空手道選手権大会では、声も大きく、突きや蹴りの多さでポイントを取り、準決勝へと勝ち上がった。
ところが。海音ちゃんは勢い余って相手の顔に突きを入れてしまう。減点。そのままポイントを返すことができず、3位に終わった。
「よく頑張ったね」と慰めるお父さんとは裏腹に、海音ちゃんは落ち込む様子もなく「黒帯になるまでやめない」と断言。もうすっかり空手に夢中だ。

空手をはじめてから海音ちゃんは大きく変わったことがある。以前なら男の子に叩かれたら倍返しして泣かすような子だったのに、ケンカをしなくなった。「人に手を出してはいけないという道場の教えをきちんと守っているんです」と、振る舞いが大人しくなった娘にお母さんは胸をなで下ろす。
だけど直してもらいたいところもあるという。
「負けた試合もそうでしたが、諦めが早いんです。忍耐強くなれば必ずできるというのを分かってほしい」
空手を通してそのことを学んでいけば、人間としてもっともっと成長できるはずと、お母さんは娘に期待している。
(滝沢康英=文)
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