[塾生]波多野詩菜
[こどもの日全国少年野球教室]未来へつながる一言を
会場全体に広がった町田市の少年野球チームの選手たちの間に、様々な色のユニフォームに身を包んだ13名の大人が混じっている。ヤクルトや、巨人、西武、そして今はもう存在しない近鉄まで。コーチたちはみな、プロ野球OBの選手なのだった。手取りは少ない。ほぼボランティアのような仕事だが、他会場を含め総勢360名もの派遣講師がこの日各地で少年たちとともに汗を流した。昨年引退し、今は解説者として活躍している元西武の小関竜也さんも、町田市の教室にコーチとして参加していた。
小関さんは、自身がプロになれたのは運だと言う。「運があるっていうのは、人より野球の才能があったり、速く走れたりしたこと」。しかし、その先は努力の道だった。「プロのなかで純粋に見たら、僕は中」。自分より遠くに速く投げられる人も、速く走れる人もいる。周囲に流されないよう、先の目標に向かって今自分がやるべきこととのみ向き合いコツコツと取り組み続けた。「今の時点が一番大事。今この瞬間を精いっぱいやることで、この先が見えてくる。常に僕はそうやってきた」。
だから、子どもたちには今一生懸命取り組めるような、何かしらの目標を持ってもらいたいと考えている。「子どもって、スポンジみたいに吸収できる。純粋だから。そういう時にちょっとでも心に残るようなことがあると、目標を見つけられることもある。僕らが野球を一生懸命やってきたように、子どもたちにも何かしらやりたいことに向かって一生懸命になって、自分の可能性を広げていってほしい」。何か一言ずつでも子どもたちの将来に残るような言葉をかけたい、というのがこの教室での思いだった。
現役引退から1年ほど経った現在は、本業とする解説者の仕事に加え、西武やOB会からの要請で時々埼玉県の小学校の体育の授業に参加したり、野球アカデミーのコーチをしたりもしている。「大きな仕事も区別せず、とにかく1つの仕事に対して精いっぱいやっていくところから」と、選手時代のスタンスは今も変わらない。この先はまだ指導者を視野に入れるかそのまま解説者として極めていくか定かではないが、どうせやるなら解説者として評価されるようにやっていきたい。そして、役に立てるのであれば子どもたちに携わるような活動にもどんどん取り組んでいきたいと考えている。
練習終了後のことだった。「サインをください」と駆け寄ってきた2人の少年がいた。彼らは少し手前で立ち止まり、帽子を取って丁寧に頭を下げた。差し出された野球ボールと帽子のキャップにサインを終えた小関さんは、にこやかな笑顔を浮かべ、むき出しになった2つのいがぐり頭を大きな手のひらで包んだ。頭をこねくり回されながら掛けられた「頑張れよ」という一言を、きっと彼らはこの先も忘れない気がする。
(波多野詩菜=文)
[塾生]波多野詩菜, スポーツライター登龍門 present by 「朝日日刊インサイト」
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[塾生]波多野詩菜- shina_hatano
- 1990年2月生まれ。慶應義塾大学文学部に在学中。慶應スポーツ新聞会サークルに所属し、主に大学サッカーの取材を中心に活動中。
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