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シズガクの10番
全日本ユース選手権のベスト4が出揃った。ユースチームをなぎ倒し、高体連のチームで唯一残ったのが静岡学園だ。
準決勝が行われる国立競技場への切符を賭けたマリノスユースとの準々決勝、シズガクを勝利に導いたのは10番を背負う大島僚太だった。
シズガク歴代の10番には谷沢達也や狩野健太など、現在Jリーグで活躍する選手たちがいる。ショートパスやドリブルを多用するスタイルが特徴のチームの中で、10番はその象徴的な存在だ。そして、大島はその伝統にふさわしいテクニックで攻撃陣を引っ張った。一方で驚きもあった。守備面での貢献度の高さだ。
前半、静岡学園は決定的なチャンスを作れない代わりに相手の攻撃もしっかり封じた。その要因は大島がマリノスユースの攻撃の芽を摘み続けたことにある。
中盤やや低めの位置にポジションを取ると、豊富な運動量で動き回り、危険を察知してはボールを奪い取るなど、守備の局面に必ずと言っていいほど顔を出していた。ピッチの至るところでインターセプトを披露し、まるで大島が何人もいるかのような印象すら受けた。
しかし、彼が守備に奔走するということはそれだけ攻撃の迫力が削がれることを意味する。実際、ピンチは未然に防いだものの、相手ゴールを脅かすようなチャンスは作れなかった。
そして後半、大島がポジションを上げるとシズガクの攻撃に厚みが生まれ、ゴールの予感が漂うようになった。相手の重心を見極め、手玉に取るように進むドリブルでマリノスユース守備陣を切り裂き、高い技術でタメを作って味方の攻撃参加を促した。あえて中央の密集地帯をドリブルで進む姿は、「シズガクの10番」の意味、重みを理解し、それを己のプライドにしているようだった。
こうして攻撃にリズムが生まれたシズガクが後半19分に先制点を挙げる。リードのまま終盤を迎え、大島はベンチに退いた。しかし、終了間際に同点に追い付かれると、シズガクは彼抜きで延長を戦うことになった。結局、延長後半終了直前に決勝ゴールが生まれ、シズガクが前回王者を倒して準決勝へ進出を決めた。
攻撃を牽引する様はシズガクのエースに相応しいものだった。ただ、それに加えて守備力も備えたシズガクの10番は珍しい。ボランチタイプでパスを捌くような選手なら、攻撃を構築しながら、守備も疎かにはしないだろう。しかし、大島は相手のゴールに近ければ近いほど威力を発揮するタイプだ。ドリブルで相手を翻弄したこの日の後半を見れば明らかだ。そんな選手がしっかり守備もする。いや、前半に限っては誰よりも動き、体を張っていた。そのくらい守備の人だった。
誰もが攻守でハードワークを怠らないのが現代サッカーの常識となった。王様と呼ばれることの多かった10番も例外ではない。もちろんそれはテクニカル集団のシズガクも変わらない。むしろ今年のシズガクは、攻撃も守備も中心は10番だ。
「シズガクの10番」のイメージが大島僚太の下で変わろうとしている。
(青木務=文)
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