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[準々決勝 ウルグアイ×ガーナ]MVP
「SAY NO TO RACISM」の文字が刻まれた横断幕をウルグアイ、ガーナ双方の選手たちが手に持って立ち並ぶ。FIFAによる人種差別撲滅キャンペーンが準々決勝の4試合でセレモニーとして行われる。
両チームキャプテンが宣誓文を読み上げる。ピッチを取り囲む電光掲示版も「SAY NO TO RACISM」の文字で埋め尽くされる。が、横断幕が選手たちの手を離れ、選手たちがピッチに散り、試合が始まった途端、電光掲示板は企業広告で埋め尽くされてしまう。
サッカーのW杯が巨大なビジネスとなっていることは周知のとおりだが、このセレモニーが準々決勝4試合限定で行われるのなら、試合終了までピッチを取り囲む電光掲示板で「SAY NO TO RACISM」の文字を表示しても良かったのではないだろうか。そういった意味ではこのセレモニーはどこか中途半端の域を出ない。やるなら大会を通して徹底的にやってほしかった。
大会もいよいよ終盤に差し掛かり、まだ終わってない段階でこういうことを言うのも何だが、今大会のMVPはディエゴ・フォルランだ。ウルグアイ代表での彼の活躍は本当に素晴らしい。
ディフェンスではときに前線から積極的にプレスを掛け、ときに後ろまで下がって守備に参加する。オフェンスでは中盤でゲームを組み立て、ときにサイドに流れて起点となり、ときに中央から突破する。セット・プレーのキッカーも務めるし、果敢にシュートを放ちゴールも決める。スーパーとしか言いようがない。この日も見事なFKをガーナ・ゴールに突き刺し、試合を振り出しに戻した。
サッカーは何が起こるかわからない、とはよく言ったもので、延長戦終了間際の攻防とそこから生まれたPKのシーンはまさにその言葉の象徴だった。スアレスは音速で地獄と天国を行き来した。音速でサッカー選手、愚者、聖者の転職を成し遂げた。
結果論に過ぎないが、ウルグアイ人から見ればスアレスは身を呈してチームを準決勝に導いた、ということになるのだろう。ファウルも技術の内である。だからといってスアレスの行為は褒められたものではない。良い子のみんなはマネしないでね。
そのPKを外したギャンは試合後泣き崩れた。そのPKを決めていればガーナが初の準決勝に進出していただけに、彼の心痛は察してあまりある。しかしパラグアイ戦の駒野友一にも言えることだが、チームの敗戦はPKを外したその選手のせいではないのだ。これだけははっきりと言っておきたい。
PK戦、ウルグアイ代表の最初のキッカーは他でもない件のフォルランだった。直前にギャンがPKを外すシーンは、ガーナ代表はもちろんのこと、ウルグアイ代表にも少なからず影響を及ぼしていたはずである。しかしフォルランはごく冷静に決めた。
フォルランの凄いところは常に淡々としているところである。試合後のインタビューもいつもの勝利試合の後のようだった。悟りを開いた境地に達しているように見える。
ケガで前線を退いたルガーノに代わりキャプテンマークを託されたフォルランが、ウルグアイを60年ぶりの優勝に導く可能性は…ちょっと低い。
(本田千尋=文)
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