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4強をめぐる冒険
“世界を驚かす覚悟がある。”
2009年6月、大和猛蹴たちはタシケントでの死闘を制し、世界一を賭けたガチンコ勝負への出場権を手に入れた。その証として渡されたTシャツの胸で誇らしげに踊っていたのが、このフレーズである。
“世界を驚かす覚悟がある”の信念を胸に、「ベスト4」を目標に掲げた闘将・岡田武史。この瞬間から、岡田ジャパンの“4強をめぐる冒険”が華麗に幕を開けることとなった。
最終壮行試合後の進退伺、大会直前でのテストマッチ4連敗、度重なる戦術変更などにより、高過ぎる目標に対する罵声は頂点を極めた。中には、出場辞退した方が潔いとまでいう解説者もいた。しかしサムライブルーの指揮官は選手たちを信じ、目標を下方修正することは全く考えていなかったという。
果たして日本代表は、南アフリカの地で世界を驚かせた。
岡田ジャパンはグループEを神々しい程勇敢に闘い、歴戦のツワモノを敵に回し2勝を捥ぎ取り、前評判を覆して決勝トーナメントに進出した。
悲願のベスト4に向け、青き戦士の前に立ちはだかる最初の関門は、南米の曲者・パラグアイ。互いに初のベスト8進出を賭けた熱戦は、120分闘っても勝負はつかず、PK戦にもつれ込んだ。
1人目、遠藤。
ゴール右上に8割程度の強さで突き刺した。Jリーグの試合では蹴るであろう、彼特有の“コロコロPK”ではなかった。遠藤を持ってしても平常心で臨めるような雰囲気ではなかったのか・・・。
とにかく、2人目にバトンはつながった。
2人目、長谷部。
本番直前になってキャプテンに指名されたこの男は、気合いでチームを引っ張る闘将タイプのリーダーではない。当たり前のことを黙々とこなし、回りを納得させる。長谷部とはそんな男だ。だからこそ、今回も当り前のように淡々と左上に決めて見せた。
3人目、駒野。
前回に続き2大会連続の出場となる駒野は、レギュラー内田の体調不良により4試合フル出場を果たしていた。大会を通じて期待以上の働きを見せ、間違いなく自身を深めたであろう駒野は、ボールに向かって歩を進める間、視線を上げることは1度もなかった。邪念を打ち消すかのように振り抜いた右足から放たれたジャブラニは、全くブレることもなくクロスバーを叩いた。駒野は頭を抱えながら天を仰いだ。PKの地点に立ってから、駒野の視線が上を向いたのは、この瞬間が初めてだった。
4人目、本田。
大会中に恐ろしい程の急成長を見せたレフティ・モンスターは、完全に相手を飲んでかかっていた。本田と眼が合ったGKは、逃げるかのようにゴール中央から飛び退いた。つい数秒前までGKが構えていた場所に、本田はボールを転がした、表情ひとつ変えずに。
貫録勝ち・・・。しかし、遅すぎた。
世界の4強入りを目指したサムライブルーの冒険は、8強目前で唐突にゲームオーバーを迎えた。ベスト8を経験したことのない日本代表にとって、その目に見えない壁は果てしなく高いものなのかも知れない。
確かに、ベスト8進出は叶わなかった。しかし、ベスト8への入口を肉眼で捕らえるところまで行ったことは紛れもない事実なのだ。
今回の結果を“限りなくベスト8に近いベスト9”と、ある代表OBが表現していた。岡田監督は「今は日本のサッカー界のことまで考える余裕が無い」とコメントしていた。しかし、日本サッカーに、立ち止っている暇はないのだ。
パラグアイ5人目・カルドーソのPKがゴールを揺らす音こそが“4強をめぐる冒険・第2章”始まりの合図なのだ。
(三浦敬介=文)
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