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スペインは日本を否定するはずだった

 実現してほしかった。
 日本はスペインと戦ってほしかった。
 もし、Pk戦が運のようなものであるのならば、例え世界中のメディアに凡戦と罵られようとも、運だけでパラグアイを退けてほしかった。ベスト8という結果を望むわけではない。勝ち上がった先に、これまで体験したことのない極上の相手が待っていたからである。日本が南アフリカで対戦しなければならなかった相手は、オランダでもなく、イタリアでもなく、スペインであると私は思う。守りを固めた日本の兜を一刀両断するようなサッカーを見せつけてくれるのは、スペインをおいて他にはない。
 一次リーグを突破した日本のサッカーは賞賛に値する。だが、同時に一次リーグを突破したサッカーを、自分たちが否定しなければならない。日本にとって今現在、一番勝率のいいサッカーは、4年後、間違いなく一番勝率の悪いサッカーになる。日本のサッカーが4年後、現状維持であり続けることがないように、世界のサッカーも現状維持であり続けることはありえない。
 パラグアイ戦の後半、岡田監督は、守備的な阿部に変わって攻撃的な中村憲剛を投入した。この交代は、岡田監督が、これまでのサッカーでは勝てないと感じ、試合中にも係わらず、自分たちのサッカーを少しずつ、少しずつ否定し始めた瞬間であると思う。勝利という結果には結び付かなかったが、この交代は絶妙手だった。南アフリカ大会を通して日本が急成長したように、岡田監督も急成長したのだ。
 もし、日本が準決勝に進むことができたのなら、スペインは一次リーグを突破した日本代表のサッカーを全否定するようなサッカーを見せつけてくれる可能性があった。
 勝たなければならないというプレッシャーを感じていたスペインは、一次リーグこそ苦戦していたものの、決勝トーナメント一回戦でポルトガルを圧倒した。それも、ほとんどパスのみで圧倒したのである。日本のパスとスペインのパスの何が根本的に違うのかはわからないが、何かが違うというのはわかる。パス角度なのか、強さなのか、理由はわからない。ただ、日本はパスを出す位置に選手が立っていない。対してスペインの選手は、パスを出す位置にフリーで立っている。ポルトガルは決して弱い国ではない。中盤のプレッシャーだってパラグアイと同等の厳しさ持ちえている。それでもスペインは、ポルトガルをパスのみで圧倒した。
 日本は、パスを繋いで前に進むことができなかった。
 スペインは、パスを繋いで前に前に進んだ。
 目の前の相手が、自分たちを全否定するサッカーを見せつけたのなら、築き上げた自信は、恥に変わり、体は自らが自らを変えることを欲求するはずである。もし、スペインと対戦するこができたのなら、日本は自分たちのサッカーを否定しなければならないという状況をいち早く手に入れることができたのである。
 もう、賞賛は終わりにしなければならない。
 そして、少しづつ、少しづつ自分たちを否定し、今よりも、もっともっと勝率のいいサッカーを追求し始めなければならない。
 一次リーグで敗退した、イタリアとフランスは初戦を引き分けた。引き分けたことによって自らのサッカーを否定するきっかけを失った。きっかけを作ってくれるものは引き分けではない。敗戦であり、苦い経験である。
 南アフリカでの日本の最終結果は、引き分けによるPK負けである。
 
(丹野洋一郎=文)

W杯関連記事, [塾生]丹野洋一郎, 投稿記事



コメント(5)

kiriri2010年7月1日 12:34 PM 

スペインに惨敗したチリは攻撃サッカーを否定し恥と思い「これからは守備サッカーだ」と思うんでしょうかね。
パラグアイがスペインに敗れたら「これからはパスサッカーだ」と変わっちゃうんでしょうか。
確かに準々決勝のスペインは感動的に美しかった。
でも絶望的な気持ちにもなった。
日本がこのサッカーを目指していたら100年たってもベスト8にすら勝ちあがれそうにない。
それほどの高みだった。
もし日本がベスト8に進みスペインに惨敗していたら、
サッカーファンの「スペインサッカーを目指そう」などという淡い夢すら打つ崩されていたのではなかろうか。
まだ夢を見続けられるだけ幸せだったのかもしれない。
個人的には日本はドイツサッカーを目指したらいいなあと思いました。
ドイツ人指導者を希望します。

スズキ2010年7月1日 2:36 PM 

丹野様

記事読ませていただきました。


要するに‘善なるスペインサッカー’により‘邪悪なる日本サッカー’は
退治されなければならなかった。

ということですか?


お師匠様(?)と同じく、

‘負けろ日本(邪悪なる守るサッカー)!未来ために!(これからの善なるサッカー)’

ということですか?


あんなサッカーで勝ち上がるくらいなら負けろ!と

日本人のあなたは日本の負けを望んでいたと。
‘日本サッカーのため’に?



~日本にとって今現在、一番勝率のいいサッカーは、4年後、間違いなく一番勝率の悪いサッカー~


根拠は?


~日本のサッカーが4年後、現状維持であり続けることがないように、世界のサッカーも現状維持であり続けることはありえない。~


4年前、イタリアに負けたからドイツはスタイルを変えたと?
スイスに負けた韓国もスタイル変えたと?
負けた国々は、みなスタイル変えたと?

恥と感じたから?


ってことはイタリアはスペインのサッカー目指すということ?
チリは、3-0の結果を踏まえ、ブラジルサッカー目指すって事?
スイスは、0-1の結果を恥として、チリサッカー目指すって事?

今大会日本に負けた国は、全否定された自分たちを恥と感じて日本のサッカー目指すって事?

それとも0-7とかのスコアじゃないから恥じゃない?
全否定されるほどではない?




いや、言いたいことはわからなくはないですよ。
日本にもスペインのようなサッカーをして欲しい。それが出来うる力はある。
ってことですよね。


それは自分も思います。


ただ今大会別に恥ずかしいことしてるわけじゃないし、卑怯な事してるわけでもない。精一杯を見せてるだけ。


確かに反省は必要だし、これからは点を取りやり方を身につけていかないといけない。
点取らないと勝てないんだから。

今の守備力にさらなる攻撃力が身に付けば・・・。


4年後に期待します。



まとまりのない文章、ご容赦下さい。

冬のトリトン2010年7月3日 9:18 AM 

スペインと戦えば、確かに日本の守備的サッカーは否定されたでしょうね。しかし、それが日本の将来につながるかどうかは・・・。
理由はハッキリしてますよ。ベスト16に入っただけで、「岡ちゃん、サイコー!!」 「感動をありがとう~」のオンパレード。たとえスペインに負けたとしても、「初のベスト8、よくやった」で終わらせていたでしょう。日本が自らを否定することができたのは、唯一、3連敗で予選敗退した場合のみだったはず。3連敗となれば、いかに正当化しようとも「このままではマズい」との声が国民から聞こえてきたでしょう。そうすればいかに厚顔無恥な日本サッカー協会でも、会長をはじめ強化委員会も真に「日本代表を強化していくか」を考えたはずです。いま一番喜んでいるのは、誰よりも犬飼会長でしょう。自らの首がつながったことに。これで責任を問われなくなったんですからね。
残念ですが、日本は一から出直す絶好の機会を逸しました。「今回のベスト16は立派だが、これはたまたまであり、ベスト16にふさわしい実力があるわけではない。この結果を将来につなげるためにも岡田氏にはお引き取りいただき、もっと優秀な監督を招へいし、強化を進めなければ」との共通認識が国民にあれば、将来に期待が持てます。しかし現在巷にあふれているのは、「岡田監督の知られざるエピソード」とか、「○○選手は、きっとやってくれると信じていた」とかのヨイショ記事ばかり。ジョホールバルから、いや、もっとさかのぼれば「ドーハの悲劇」から日本のファンは1歩も成長してない。すべて「感動をありがとう」でかたづけ、前に向かうための糧としない。これでは4年後、日本代表が進化するとは思えません。
自分はいまでも岡田監督をヘボ監督だと思っています。むろん精いっぱい努力したことは間違いない。しかし代表を率いてW杯を戦うには能力不足だと、今でも思っています。
さて・・・、ともかく祭りは終わりました。さしずめ今の日本は祭りのさなかにあって、酒を飲んでいい気分になっている状態ですかね。ま、いい気分になるのは結構。しかし酒を飲みすぎると待っているのは・・・そう二日酔い。ジョホールバルの勝利に酔って本大会への準備をおろそかにした、かつての轍を踏まなければいいですがね。

三四郎2010年7月5日 2:17 PM 

日本人には日本人に合った戦法というものがある。自明のことなのに、なぜこうも分からない人が多いのだろう。

これが僕の正直な気持ちです。

51502010年7月6日 8:56 AM 

そもそも、スペインの「繋いで攻めるサッカー」が善で日本の「守備的なサッカー」が悪…的な発想が理解出来ない
単なる我が儘な思い込み
WBCを制した日本の野球は「スモールベースボール」として称賛されました 
でも、人によっては送りバントや敬遠を嫌う人もいますよね
頂に登るルートは数多くあります
他のルートを否定するのではなく、柔軟に受け止める懐の広さが必要ですよ、あなたもね

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