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- 2010年7月1日
「同志」の道しるべたる敗戦
「サッカー興味なかったけど、サッカー見てみようかな。」
オランダ戦後、悔しさで呆然とテレビを見つめる私の後ろで、7歳年上の姉がポツリと言った。
毎日育児に追われ、サッカーなど興味すらなない、ましてやサッカーのルールすらまるで知らない彼女がそう言ったことに、驚きとある種の高揚感を覚えた。
今大会の日本代表は何だったのだろう。
大会直前の親善試合では全くと言っていいほど結果が残せず、「迷走」などと書きたてられ、グループリーグ突破は非常に厳しいと目されていた。
しかしW杯開幕直前に戦術変更。すなわちポゼッションからリトリート速攻へ。
これがすべてを変えた。
連日放送された日本戦。映し出されたのは世界の強豪相手に、必死に耐えしのぶ日本代表のプレーの数々。中央から、サイドから、コーナーキック、フリーキック、幾度のピンチを汗にまみれた、必死の形相で跳ね返す選手たち。バイタルエリアは阿部、遠藤、長谷部で細かく互いのポジションをチェックし、迫りくる危機を未然に防いだ。サイドは松井、大久保、長友、駒野の豊富な運動量で数的不利を作らせなかった。万一サイドから危険なボールが供給されようと、今や世界の屈強なストライカーらにも決して高さで負けないことを証明した、中澤、闘莉王が跳ね返した。そしてゴールマウスを守る川島は何度となくスーパーセーブ繰り返し、チームを鼓舞した。そんな中、数少ないチャンスを、本田を起点にして、得点し勝ち上がった。
そして迎えたパラグアイ戦。この試合でも日本はパラグアイの攻撃を耐え忍んだ。その時間120分。本当に耐えに耐えた。
PK戦に持ち込まれたゲーム、勝利の女神がほほ笑んだのは、パラグアイであった。
悔しい。ただ悔しい。ただただ悔しい。
これほどの悔しさを味わったのはどれほどぶりであろう。
98年も、2002年も、2006年も、これほどの気持ちが湧き出ることはなかった。
そしてこれほどピッチ上で涙を流す選手たちに心動かされ、涙したことは初めてだろう。
それは、例えるならばまるで、日々隣で笑って過ごした無二の親友が、高校最後の大会で、全てを出しつくしても勝てなかった悔し涙に、共に涙する瞬間のようだった。
今大会の日本代表は何だったのだろう。
代表メンバーの耐え忍ぶ姿は、強烈に心を揺さぶり、刺激し、南アフリカから送られてくる勇姿に国民は一喜一憂し、歓喜し、絶叫し、そして涙した。
探し求めた日本のスタイル、日本らしさ。もしかしたら、このスタイルこそ「そのピース」にぴったりとはまるのかもしれない。日本人特有の勤勉さで走り回り、規律正しく統率された守備で世界に立ち向かい、すきあらば得点を奪う。その姿勢は、華麗なパスワークでゴールを奪う姿よりも、愛国心ならぬ「同志」の意識を強烈に思い起こさせる。
試合内容は決して「面白い」わけではないし、今大会の代表にスターはいない。
強いてあげるならば本田だろうが、当初期待された中村俊輔はほんのわずかの出場時間にとどまった。
しかし彼らは勝った。そしてその「結果を導くまでの過程」に、「耐え忍ぶ姿」に日本は沸いたのだ。
「同志」を意識させた今大会の代表は、これまでのどの代表よりも「日本代表」だろう。
冒頭の姉の言葉は、そんな国民の意識の一端を垣間見る言葉に思えてならない。
今後このスタイルの継続し、昇華させるのか、はたまた全く異なるスタイルへと変貌を遂げるのか。世界の頂に到達するには未だ険しい道が続く。だが、今大会の敗戦がその道のりへの道しるべであるのならば、最高の贈り物だろう。
(富樫哲=文)
コメント(1)
- 冬のトリトン2010年7月3日 9:41 AM
とうとう、日本代表の試合は1試合も見ませんでしたよ。なぜって? 通常の実力をお互いが出せば負けるし、たとえ勝ってもそれはマグレにしかすぎず、次につながらないからです。
「今大会の日本代表は、何だったのだろう」ですか。そうですねぇ、さしずめ「アッチコッチふらふら迷走した挙句、最後の最後に打った大ばくちが幸運にも当たった、幸運なチーム」というのがふさわしいんじゃないですかね。むろん選手が頑張ったのは認めます。しかし頑張ったのは日本代表だけじゃないでしょ(そんなものは当然です)。仮に実力が伴っていたというのなら、今年に入ってからの無様な試合は何だったんですか。率直にいってあれが真の実力でしょう。
それでもこの結果を、「幸運だった」との共通認識があればまだ先があるでしょう。しかし強化委員会が岡田監督の続投を要請するとか。日本サッカー協会が勘違いをしていることの、何よりの証拠でしょう。
試合内容も、「守ってカウンター」でしょ。確かに現時点ではそうするしかないのはわかります。しかしそれを対戦相手が決まって以降やってきたというなら継続性もあるでしょうが、そうじゃないでしょ。そもそも守りに徹すればあるていど機能することは実証済みのはず。課題はどうやって得点をとるかでしょう。その工夫も、直前の試合ではまったくみられませんでしたよね。本大会でも本田個人が頼り。これが日本のスタイルというのでは、あまりにも芸がなさすぎるってもんでしょう。
結論。今の日本は浮かれすぎて足元の危機が見えていない。自分は他の日本人のように喜ぶ気分にはとてもなれませんね。
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