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ポートエリザベスの雨は宮城の雨だった。

決勝トーナメント一回戦、韓国は堅守ウルグアイに惜しくも敗れた。
韓国はこれまで素晴らしい戦いを見せておりこの日も敗れはしたものの、A組首位通過を果たしたウルグアイを最後まで苦しめた。

だが、予選に見せたような韓国ではなかった。

この日の韓国はギリシャを一蹴し、ナイジェリアを追い詰めたあのスピード迫力を失っていたように思えた。
サッカーは相対的なスポーツである。その原因にはウルグアイが韓国をそうさせなかったことはもちろんあるだろう。ましてウルグアイは堅守が特徴のチームである。実際ブロックを形成し韓国の良さを消していたし、また、連戦続きの中3日の試合で疲れがピークに達していても不思議ではない。

しかし、私はこの試合をみて、熱狂に渦巻き燃えるような日々を送った6月のあの日を思いだした。
あの日とは8年前の2002年6月18日 日韓W杯日本対トルコ戦のことである。

あの日の試合は、日本中がまさに青き炎のように燃えさかった予選とは異なり、燃え尽きそうな灯火のように熱気を失った試合だった。
初戦の埼玉ような場所と違い、ピッチと観客席の距離が遠い宮城が単に熱気がないように思わせただけだったかもしれない。宮城に降った雨が単純にそう思えただけかもしれない。だが、確かに試合そのものだけでなく、日本国中がある種の静けさのまま終わってしまった事を鮮明に覚えている。

その理由を私は戦う選手監督スタッフだけでなく、応援する日本国中が皆満足してしまったからと捉えている。
もちろん、例えば、中田英寿はW杯後「不完全燃焼」と答えているし、試合後泣いている選手もいた。見ている方も、私を含め試合に納得しない人々はたくさんいたしトルシエ監督の采配に疑問を投げかける人は多くいただろう。

だが日本国中が五感で納得してしまっていた。頭ではなく肌でなにか安心しきっていたものがあった。
日本は開催国として決勝トーナメントに行かなければならないノルマがあった。南アフリカは今回敗退したが、当時は開催国で決勝トーナメントに行かなかった国はなかったからだ。そのプレッシャーのなかで日本は初戦初めての勝ち点をあげ、2戦目で初めての勝利をあげ、初めてづくしの上昇気流の中日本はノルマを達成した。

そこで日本は満足してしまった。達成感を感じてしまった。そう思えた試合だった。

それは今日の韓国にも通じるものを感じた。
自国以外のW杯で初めて決勝トーナメントに進んだ韓国はそれに満足してしまっていたのではないだろうか。頭ではなく肌で。
ホ・ジョンム監督は目標を決勝トーナメント進出とW杯前から述べている。その目標を達成した韓国はある種の満足感を覚えていたのではなかったのだろうか。

試合後、私は日本のことを思った。同じ轍を踏まないでほしいと心底感じた。

実はこれまでの日本代表の戦いぶり、そして決勝トーナメント進出を喜べなかった。
喜べない理由を消化しきれないでいた。なぜ15年も見続けた日本代表をまた日本人である私が喜べないのか本当にわからなく、もやもやして消化しきれなかったのだ。
理由を色々考えた。いろんな人の意見を見てみようと紙面、Web、あらゆるメディアでどんな意見があるのだろうと、それこそこんなにも探したことはないと思うくらい読みあさりもした。だが答えはわからなかった。

技術を駆使して小気味いいパスワークから俊敏性を生かして崩していく、それを日本のサッカーといえるかどうかはわからないが、私が思う日本人らしいサッカーを今回のW杯では見せてほしいと思っていたし、ずっと日本人は出来ると信じていた。私は今でもそれを信じている。だからこそ今回の岡田監督、そして今までの岡田監督の戦いには納得がいかなかったし、2年半の道のりを思うととても喜べる気にもなれなかった。
第三者からみればまったく退屈な試合だったカメルーン戦に勝ったことが決勝トーナメント進出の要因なのは間違いない。デンマーク戦もその結果として引き分けで良い状況を生んだことが勝利につながった。つまりたった1試合カメルーンの攻撃を守り抜き、1点ゴールした。それで喜んでいいのだろうか。
歴史はつながっている。例えば韓国は攻撃的なサッカーに生まれかわった要因は2002年のヒディングが作った韓国をスタンダードとして目指しているからだ。勝ったことで日本代表のサッカーのスタンダードはここで作られるかと思うと負けてほしいとすら思ってしまう自分もいた。

ただその自分の気持ちは矛盾していることも分かっている。私が理想とするサッカーも勝利を目的としているからだ。つまり、どんなサッカーをしようとどんな道のりを踏もうとすべてはW杯で勝利するために実行されているからだ。
日本代表は勝利した。それは覆されることのない結果であり、そのために今まで闘ってきた。それに日本はブラジルやスペインじゃない。内容と結果両方求められるような立場ではない。
だからこそこの決勝トーナメント進出をどう捉えて良いかわからなかったのだ。

だが私はこの日の韓国を見て思った。日本はベスト8に進んでほしいと心底思った。

今日のポートエリザベスの雨になってほしくないと。
8年前の宮城の雨の再現になってほしくないと。

岡田監督はベスト4を目指すと公言している。
誰もが冗談とも思えたこの目標を掲げることで「満足しない」ことを得ることに
成功した。
つまり、次のステップへ飢えた日本代表がいるということだ。
勝者のメンタリティを得た日本代表が確かに存在するということだ。
それこそが戦術、采配ではなく岡田監督最大の功績だ。

確かに気持ちのもやもやは晴れないままでいる。勝ったとしてもその先に素晴らしい未来が待っているとは限らない。

だが、間違いなく日本代表は新たな挑戦を得る状況にある。
パラグアイは強い。
それに初めて引いた相手と戦うことになるかも知れない。リアクションサッカーをする
現在の日本代表にとってはマッチメイクの相性は悪い。

それでも
宮城の雨を超えるメンタリティをもった日本代表がここに存在する。
どんな戦い方になってもいい。日本らしいサッカーができなくたっていい。
歴史を塗り替えしてほしい。

今日の韓国戦はそんな思いに気づかされる一戦だった。

(岡田洋平=文)

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コメント(1)

マンマミーヤ2010年6月29日 3:28 PM 

僕はサッカーヲタクではないので、戦術とか試合内容とか将来のニッポンとか、よく分からないし興味もないです。
死に物狂いで1点を死守する姿も美しいく心揺さぶるし、
なにもできず惨敗してピッチで泣き伏せる姿にも、途方もないカタルシスを感じます。
壮大な人間ドラマ、スポ魂ものの漫画を読むような感覚で日本代表を見てきました。
それでも、人生をかけた渾身の一発ジョーク「目標はベスト4」が
ここまで意味を持つことになるなんて、思ってもみなかった。
日本人が100%の力を発揮するには「明確な目標設定」というのは必要なのかもしれません。
パラグアイにはなんとしても勝って欲しい。
その先には「ベスト4をかけてスペイン(希望)と戦う」という、
誰もが夢に描いた最高のシチュエーションが待っています。
本当の意味でのW杯を日本は体験することになります。
まさに漫画みたいな展開です。とにかく勝って欲しい。
内容は問いません。僕にとっては「勝った試合」が最高の内容になるから。

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