投稿記事

  • 2010年6月23日

ロマンを捨てたスペイン

スペインの初戦の敗退は周りが思っていた以上にプレッシャーになっていたようだ。
スイス戦、決して良いとは言えなかったがスペイン独自のパスワークの片鱗は見せていたため、私は負けたとはいえ「こんな日もあるさ」と監督はじめ選手が感じていた試合であり、逆に負けたことで気が引き締まり逆によかったのではとも感じていた。

だが違った。

W杯という舞台で勝たなければならない重圧は、スペイン代表に重く重くのしかかっていた。

美しくそして魅せて勝つ。
どの国も完遂させることが難しいこの哲学は元来ブラジルの特権であった。ブラジル国民も常にそれを望んでおり、だからこそ現在負けないブラジルにあってもドゥンガ監督の解任論は鳴りやまないのである。
その特権は今スペインに移りつつある。世界最高のフットボールを展開するバルセロナを基礎とし、スペインはブラジルに変わりその特権を譲り受けた。監視役はスペイン国民ではない。世界中のフットボールファンだ。ブラジル国民のようなまるで代表が命であるかのような熱い熱気はスペイン国民にはないが、そのかわり、現代のTV放映の進歩もあり世界中のファンがスペイン代表のフットボールに酔いしれ心待ちにしているのだ。
その重圧が彼らも気づかないうちにのしかかっていたのかもしれない。というよりも彼らは世界最高と呼ばれることに慣れていなかったのではないだろうか。
今まで強いけど勝てないいうレッテルを貼られてきたなか、EURO2008以降瞬く間に世界最高のチームとなった。わずか2年間の間に。ブラジルのように何十年とそのプレッシャーと戦ってきたわけではない。彼らの時代はわずか2年間なのである。
その時間は彼らにとってあまりにも短い期間だったのかもしれない。

デルボスケ監督はシステムを変えてきた。EUROを制した4-1-4-1ではなく4-2-3-1ともとれる4-3-3。スイス戦、ブスケツ、シャビアロンソがダブルピボーテのようになってしまい2列目から飛び出しが少なかったために攻撃が行き詰った原因だった。そのためどちらかを変えてくるのではと考えていたが、中央2人はどちらも変えてこなった。その代わり、サイドにへスースナバスとビジャを配置することで、縦へのベクトルの強化を強め攻撃の行き詰まりの解消を試みたのである。
だがその微妙な変化がスペインのリズムを狂わせた。いや狂わせたというより、サイドアタッカーに特徴のあったEURO以前のスペインにもどったというほうが的確かもしれない。

世界中も魅了した4-1-4-1は2列目にすべてテクニカルな選手を配置していた。これは言うなれば将棋で言えば金を4つ並べる事。一方で今回のスペインはサイドに飛車、角を配置した。前者は攻撃への形が非常に作りづらく、コンビネーションにより守備を崩すために難易度は高い。一方後者は攻撃の形が分かりやすく攻撃の形を作りやすいという特徴がある。
デルボスケは後者を選んだ。勝ちにこだわり、攻撃はシンプルかつ効果的になった。
だがそのことはスペインの強みであるパスワークを失うことになった。またスイス戦と同じくシャビアロンソとブスケツの位置取りが低く2人重なっていたことも影響した。攻撃は流動性を失い、攻撃が単調になった原因とおもわれる。
またシャビが途中で交代したが、デルボスケはシャビの調子が上がらないと感じていたのかもしれない。メディアでもそういった意見もあるだろう。だが私は違うと思う。あくまでシャビは攻撃の潤滑油でありパスサッカースペインの心臓である。シャビの不調というよりも、シャビをとりまくサポートが少なかったことが結果としてシャビの不調につながったと感じている。

ただ誤解してほしくないのは、どの選手が良くないという類の話ではない。へスースナバスはこの日も素晴らしい突破力を披露していたし、ビジャの比類なき才能がなければ勝つことはできなかったであろう。
個人個人をみればみな素晴らしい才能である。だが、私たちが目撃したいスペインは世界最高のチームであるべきなのだ。誰もが真似できず誰もが憧れる代表チームである。選手個々の能力を最大限に発揮すべく有機的に連動するチームでなければならない。

その意味でこの日のスペインは強いチームであった。
ただ強いチームだった。
それが勝利が絶対条件の戦いの中スペインが選択した方法だったのだ

第3戦目ビエルサ率いるチリ代表は、スペインと同じく攻撃サッカーを標榜する南米の雄だ。
チリはスペイン相手に一歩も引くことなく攻撃サッカーを展開するであろう。その相手にスペインは必ず勝利しなければならない。もちろんスイス戦のように引いた相手というエクスキューズも通用しない。
そういった状況下で、攻撃的なチリよりも美しく勝つのだろうか。たとえ敗者となろうとも哲学を貫くのであろうか。それとも哲学を捨て勝ちにこだわるのであろうか。

スペインに課せられたハードルは限りなく高い。
このチリ戦はまだ決勝トーナメント前の戦いではあるが、もしかしたらW杯の行方を占うだけでなく、今後のフットボールのトレンドを占う一戦になるかもしれない。

ロマンか現実か、行方を占う一戦は間もなく始まる。

(岡田洋平=文)

投稿記事



コメントなし

コメントを投稿


書籍紹介

負けない自分になるための32のリーダーの習慣
澤 穂希 /幻冬舎
目標は「言葉」にすれば、必ず実現する。ブレずに強い心で戦い続けるための習慣。成功を引き寄せる、「有言実行」のメンタル術。

僕は自分が見たことしか信じない
内田 篤人/幻冬舎
彼はその端正な外見だけではない。男らしい一面をもっている。誰よりも優しい心を持っている。そして、だれよりもサッカーに対して真摯だ。

不器用なもんで。
金子 達仁 /扶桑社
『渡り鳥シリーズ』、『仁義なき戦い』など映画に出演し、『昔の名前で出ています』、『熱き心に』といった数々のヒット曲を生んできた小林旭。金子達仁が鮮やかに描き出す一冊。

サッカーの見方は1日で変えられる
木崎 伸也/東洋経済新報社
ボールを追うのは3流、フォーメーションを論じるのは2流。 では、「本当のプロ」はどこを見ているのか?今日からできる「プロの観戦術」を初公開!

バルセロナが最強なのは必然である グアルディオラが受け継いだ戦術フィロソフィー
オスカル・P・カノ・モレノ /カンゼン
 “美学”と“効率”が両立されている バルセロナのサッカーの本質に迫る一冊

心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣
心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣
長谷部誠/幻冬舎
『心は鍛えるものではなく、整えるものだ。いかなる時も安定した心を備えることが、 常に力と結果を出せる秘訣だ。自分自身に打ち勝てない人間が、ピッチで勝てるわけがない。』

タイアップ

オーダーメイドシリコンリストバンド BANDIA
スポーツビジネスオンライン
soccerking