W杯関連記事
- コメント(5)
- 2010年6月20日
vs オランダ戦 − 拝啓 犬飼会長 様
拝啓
犬飼会長、突然このような形で発信することをお許しください。
昨日、注目のオランダ戦がありました。カメルーン戦の結果に好感触を得たのか、スタメンも戦い方も同様でした。
結果は0-1でオランダの勝利。数字だけを見れば日本の惜敗であり、オランダの辛勝です。「日本善戦」という文字が踊るスポーツ紙もあるかもしれません。
そこで会長にお伺いしたことがあるのです。
オランダははたして、日本との試合を通じ、どれほどの恐怖を感じていたと思われますか?
本気で優勝を狙う彼らにとって、予選リーグは早々にクリアしたい場に違いありません。日本、デンマーク、カメルーンを軽視しているという意味ではなく、堅実に戦いながらも、しかし確実に勝ち点を稼いでいきたい。日本戦の狙いは勝ち点3であり、1でも悪くない。だから、圧倒的なポゼッションでのボールまわしは、イライラとはするけれども、焦ることはない。そう思っていたのではないでしょうか。
前半、彼らはボールを保持してスペースを探していました。しかし敵陣は守備に奔走する相手選手によって埋められ、ボールの出しどころがありませんでした。とはいえ日本のプレッシングは低い位置からであり、ボールまわしはそれほど厳しくなかったと見受けられました。
やはり攻撃を焦る必要はありません。ボールをまわし、スキを見つけたならば、一気に攻勢をかければよかったのです。
行く末は我慢比べです。
どちらの足が先にとまるか。どちらの集中力が先に切れるか。
試合は90分です。
前半、日本を相手にボールをまわし続け、翻弄し続けました。
心理的に、体力的に優位だったのは、どちらだったのでしょうか。
一方の日本にとって、0-0で終えた前半はプラン通りだったのでしょう。引いて、我慢して、カウンターで勝ち点を狙う。後半も同様のプランだったのか、とくに変わった様相はありませんでした。しかしオランダは、明らかに前半と態度を変えてきた。眠りから覚めた獣のように、いっそうの速さと強さをもってゴールを狙ってきたのです。
失点はかなりの冷水でした。緊迫し均衡する展開に生まれた淡い期待感は、いっきに消え去りました。
ここからどうやって点を取るのか。日本はその形を持っていない。冷酷な現実に直面したのです。
またシュートの瞬間、スナイデルの前にスペースがあいていたことも気がかりでした。日本ディフェンスのプレスがおくれたのです。前半、あれだけオランダに翻弄された展開が、ボディブローのように効いていた。そのため出足が遅れてしまった。そう思うのは浅はかでしょうか。
それでも、失点してからの十数分間は、久しぶりに躍動した日本を見た時間帯でもあります。そしてこの時間帯にこそ、オランダは恐怖を抱いたのではないでしょうか。
ラインを高く保ち、中盤をコンパクトにしてパスをつないでいく。駒野によるグラウンダーのクロスは相手キーパーとディフェンスの間を切り裂き、遠藤や長谷部のように、前線の選手を追い越し、相手ディフェンスの裏を狙う選手もあらわれました。
やれる。
日本の選手たちは、そう思ったのではないでしょうか。攻撃においても渡りあえる。そんな感触を得たのではないかと思うのです。
しかし、この曖昧な感触を、確実な自信へ昇華させることがドイツからの苦い手みやげだったと思います。そうして迎えたオランダ戦では、勝負どころで相手に我慢され、徐々に日本は失速していきました。
中村俊輔が投入され、彼にボールが入った時にも、鋭い動き出しを見せた選手は前線にいませんでした。彼がチームの中心だった頃に機能していたサッカーを、誰もが完全に忘れてしまっていたようでした。
中村俊輔を軸にしたチームを、というのではないのです。
パッサーである彼が投入された意図を理解した選手がいるように見えなかったことに、疑問が残ったのです。大会直前で戦い方を一変させたとはいえ、それまで何度もトライしてきた形なのに、です。
終盤にはフォワードを2枚入れ、トゥーリオを前線にあげ、パワープレイを仕掛けていきました。それでも形の成熟度は低かった。
総じてオランダにしてみれば、対峙する選手をしっかりとおさえていれば何も問題はなかったのです。
結局、チームは体を成していなかった。
岡田監督は、チームをつくりあげることができなかった。ロマンよりリアルを求め、土壇場でチームの形を大きく変えた。が、遅かった。
世界は思った以上に強い。
そう確信したのが壮行試合であったなら、あまりに遅すぎます。薄々気づきはじめたのが昨年9月のオランダ戦なら、それもまた遅かった。
韓国はドイツのワールドカップ以降、南アフリカの本戦にいたるまで、アウェイでの親善試合を14おこないました。一方の日本は、半分の7つでしかありません。
アウェイでの試合がどれほど得る物が大きいか、これは先日のコートジボアール戦が示しています。
スイスでの試合まで、コートジボアールとは2戦をおこなっています。いずれもが日本での試合であり、どちらも日本が勝った。しかしスイスでは圧倒された。この差はなぜ生まれてくるのでしょう。
ドログバがいたから?
それもあるでしょう。ではなぜドログバはスタメンに名を連ねたのでしょうか。2008年、豊田市の試合では来日さえしなかったのに、です。
スイスでの試合が本番直前だったことあると思います。しかし選手が集合しやすいヨーロッパでの試合の方が、相手チームは選手構成を含め、より本気で臨むという側面こそが、真実に近いように思えます。
また多くがヨーロッパで活躍する彼らには、日本での試合以上に強い緊迫感が襲います。
生活の場であるヨーロッパでの試合は手を抜けない。失態を演じられない。自分のキャリアに直結するからです。
チーム関係者やスカウト、エージェンシー、ファン、彼らの視線はより多く、より厳しく個々のプレイを判断できる。その環境が日本での試合以上にあるためです。
だから強化につながる。世界のレベルも知れる。
韓国がアウェイの試合を多く組んだ理由でもあると思います。同時に、日本が韓国に2連敗を喫した理由にもつながるポイントではないでしょうか。
しかしチームの完成度がどうであれ、選手たちは必死です。
自分たちの時代のリーダーが岡田監督であり、犬飼会長だった。
それは彼らの宿命であり、逃げられることではありません。デンマーク戦も待ってはくれない。選手自身が口にしているように下を向いている暇はないし、全力でファイトする以外に選択はありません。
試合後の残した岡田監督の言葉も本心でしょう。次戦以外のことについて考えられる余裕などあるはずもない。状況を思えば当然です。
だから、会長には俯瞰的に今大会をしっかりと総括していただきたいのです。もうお茶を濁さないでいただきたいのです。
海外メディアが評価しはじめた堅守第一を日本の目指すスタイルとするなら、そうした声をお聞かせ願いたい。アジリティーやパスワークを組織の軸とし、その形をもって海外メディアに評価されることを望むなら、より高い完成度を求めてもらいたい。
今大会における日本代表は、場当たり的な、哲学なき組織のように、わたしには思えます。
はたして会長は、どのようにお考えなのでしょうか。
敬具
(小山内隆=文)
コメント(5)
- T2010年6月20日 6:59 PM
場当たり的な、哲学なき組織なのは、今だけじゃないと思います。
日本のサッカーは欧州のようなスタイルを目指すといってたのに、ブラジルの監督をつれてくるといった愚行を繰り返してるじゃないですか?
スペインのスタイルを目指すのにどうして、ドイツ人の監督がマスコミを賑わすのでしょうか?リップサービスにしても程があります。
- JUNO2010年6月21日 5:49 AM
グループリーグの結果が出るデンマーク戦の前に、このような論評をされる筆者の方の協会に対する憤りは理解できます。
しかし、現実にアウェイのW杯で一勝をあげた現日本代表と代表監督に対するリスペクトはないのですか?
理念・哲学・理想とするサッカーは、代表監督がオシムやヒディングなら実現できるのですか?
自分のこどもに、W杯開幕前『日本は絶対に勝てない』と言っていました。
惨敗すると思っていました。
グループリーグは全敗確実だと。
ドイツの手みやげは、いかされたと思うのですが。
どんな強豪国も勝つために、グループリーグを突破するために必死になりふり構わず戦っていませんか?
理想とするサッカーを披露するためではないのでは。
W杯で勝つことがどれほど難しいか、日本人も骨身にしみて理解してます。
メッシが日本人だったらとも心底思いますが。
- 小山内隆2010年6月21日 6:33 PM
Tさん、JUNOさん、コメントありがとうございました。
辛辣な突っ込みは常に脳みそを活性化させてくれます。
今後ともぜひよろしくお願いいたします。
JUNOさん、
現日本代表へのリスペクト、もちろんあります。あふれんばかり、です。
オランダ戦もとても悔しかった。敗退したことも悔しかったですし、
もっと堂々と戦えるだろうと思っているから、なおさら悔しさがこみあげてきました。
岡田監督もファイトしていると思います。
誰に何を言われようと次戦は待ったなしでおとずれるわけですし、国民の期待も一気に高まった。
尋常ではない重圧のなかにいると思います。
しかし、監督や選手のがんばりと、日本代表の状況を論じることは、いささか次元が異なります。
とてつもない仕事をやっているけれど、日本代表監督という仕事の本義は何か。
チームを勝たせること、目標まで到達させることです。
とてもしんどい仕事です。でもそれが代表監督の仕事です。
では勝てているのだからいいのではないか。そういうご意見もあるかと思います。
そして戦い方の中身、まさにこの点こそが、ドイツ後のテーマではなかったでしょうか。
ご指摘の通り、どんな強豪も予選リーグを突破するために必死です。
フランスはたいへんな状況だし、イングランドも前途洋々ではありません。
理想を披露するためではない。おっしゃる通りです。
彼ら強豪は、常に自国のファンから優勝を期待されている。勝利を求められています。
でも、戦い方に中身がなくても勝てば賛美される、とは思いません。
実際、日本戦で見せたパフォーマンスの内容について
勝ったものの「ラッキーだった」と報じたオランダのメディアもあるようです。
一方イタリアのように、勝てば官軍という、とても現実主義的な国もあります。
要は、その国がどのようなサッカーを目指しているかに依るということなのでしょう。
では日本はどうか。ドイツ以前から認められた長所は「俊敏性」と「テクニック」、
改善すべきは戦えない「個の力」という内容だったと思います。
個では戦えないから、組織でポゼッションをして、つねに数的な優位を保ち、俊敏に戦う。
このような形を目指したのだと思います。つまりは理想です。
理想と現実には常に溝があります。
この溝を埋めていく作業は、仕事が何にせよ非常に難しい。しかもサッカーの場合、時間は有限。
ワールドカップ開催までという締切があるからです。
その日までに、理想と現実、両者のバランスをどのように保ち、結果を出していくか。
このバランス感覚にその国の哲学が反映されるのだろうし、
また代表監督という仕事のだいご味なのではないかと思います。
オシム前監督に完遂できたかどうかは、わかりません。
ですが、彼は理想を掲げてくれました。
日本の形で、世界と戦える。そう思えただけでワクワクしたものです。
理想を求めての敗退と、現実を受け止めた形で戦い得た勝利、どちらがいいかと問われれば、
もちろん、勝利の方が嬉しい、と答えます。
けれど、理想を追い求め、そのうえで現実でも勝利する。これが最高です。
贅沢なのかもしれません。ですが、夢は見たいのです。
さらにオシム前監督は世界を知っている。
ジェフでの結果を見れば、日本についての見識も浅くない。
つまり日本代表をどのようにリードすれば世界の舞台へ導き、戦える集団にできるのか、
その道のりを描けていたのだと思うのです。だから期待が持てた。
岡田監督はどうでしょう。
世界については未知数ですが、日本人ですから日本のことは知っています。
協会は理想を追いながらも、より現実に比重を置いたのでしょう。
「現実」とは、ワールドカップで結果を残すことです。
結果とは、岡田監督いわくベスト4であるわけですが、まぁ、それはさておき。
オシム前監督の流れを組みながらチームづくりをしていましたが、
結果が出ないと、岡田監督は自身の思うチームづくりへと方向を転換しました。
それでも昨年のオランダ戦あたりから重大な問題が出てきた。
岡田監督は、絵を描ききれていなかった、ということ。
見えていた絵は、実は世界に通用しないものだった、という問題です。
理想と現実の溝を埋めるどころか、現実すらきちんと把握できていなかった。
もはや理想を見る余裕などありません。
こうした状況が、昨年のオランダ戦以降、現在まで続いているのだと思います。
この状況、わたしには正常とは思えません。
ドイツの手みやげは、活かされていたとも思えません。
さらに、こうした経緯をもって迎えたカメルーン戦で岡田監督は勝ちました。
日本は沸きに沸きました。
開催前にはワールドカップへの無関心層6割という調査結果もあったのに、
視聴率はとんでもなく高く、勝ったから岡田監督の支持率もグーンと急上昇。
これ、日本のサッカーにとって正しい状況なのでしょうか。
勝てば官軍、でいいのでしょうか。
選手たちの心境を思えば、なおさらです。なおさら、このような経緯を忘れないでいたい。
きっと選手たちは、疑心暗鬼の状態でカメルーン戦を迎えたはずです。
状況はどうであれ、やらなければならないと自身を奮い立たせてピッチに立ったと思います。
本来なら必要のないプレッシャーまで背負って、勝利こそが絶対とされた初戦に向かったのです。
その気持ちを思うと、少なくとも万全な状況で開幕を迎えるべきだった。
できなかった理由は、導けなかった監督と、その監督を選択して最後まで起用した協会にある。
そう思うのです。
JUNOさんは、開幕前『日本は絶対に勝てない』と思われていたそうですが、
それはどうしてでしょうか。
ドイツで惨敗した日本だから、勝てないと思っていたのでしょうか。
勝てる形が見えないから、だったのでしょうか。
ドイツ以降、日本は自分たちの形をもって世界と戦うことを志したと思います。
そして戦える術も形も見えていた、とも。
わたしは、対戦相手に堂々としたアタックで恐怖を与え、攻撃を跳ね返し、勝つ日本を見たい。
そしてそれは、世界に通じる絵をしっかりと描けている人が先頭にたてば、
想像するほど無謀な願いではないと思っています。
- ジャスミンテイー2010年6月21日 8:57 PM
小山内様のコラム、拝見しました。私も犬飼会長、川渕名誉会長に同様の手紙を送りたい気分です。題名の書き出しはいいですね。この書き方は好きです。
今回のコラムを読んで思ったのは私もほとんど同じ考えですが、確かにオランダ戦の日本はアウエー戦にしては大健闘したのは確かですが、岡田監督が「ベスト4を
目指す。」と会見で言った以上負けは負けです。玉田、岡崎を投入した事を小山内様はどう思われたのかコラムに付け加えてほしかったと思います。
- JUNO2010年6月25日 10:20 PM
コメント、拝読いたしました。私のようなド素人の疑問にたいしてとても丁寧な返答をいただき恐縮しています。
率直になぜ前記のようなコメントを書いたか述べさせて下さい。
ド素人のかなり感情的な部分も多い意見なので何のたしにもならないとも思ったのですが、読者にはいろいろな人がいるはずですので。
協会に対する不信は、筆者様と同様強くあります。
私の中ではドイツW杯前にジーコでいいの?というところから始まり、ドイツでのあの結果。
W杯後は中田の引退もあって、ジーコの四年間は総括もされずさして批判もされず
メディアは中田の引退一色。
サッカー業界(失礼な言い方ですいません)にも失望しました。
ジーコは、『世界のジーコ』だから許されるのか?という穿った見方もありました
そしてオシムが監督に就任したときは、協会をちょっとは見なおしたりしましたが。
実は、筆者様の書かれた『結局、チームは体をなしていなかった。』この一文が非常にひっかかったのです。
ドイツの代表はまさしくその通りでしたが、カメルーン戦・オランダ戦を見た限り現代表は『戦うチーム』になっていると思えたのです。
チームの核とはなにか?チームの体とはなにか?
記事は非常に論理的で、自分の理解の仕方が間違っていたのが、筆者様からのコメントを拝読してわかりました。
岡田監督が今回の代表監督に適任だったのかはわかりません。W杯開幕前の4連敗の試合を見て、何をしたいのか見えず勝てる気配も全く感じませんでした。
しかしチームは崩壊しなかった。
岡田監督は、チーム全体のメンタルを作りあげることには成功したんではないでしょうか?
デンマーク戦はジョホールバル以来の心に深く残る試合になりました。
結果をださなければ開かない未来の扉もあり、その扉が開いてもその先に道が続いているのかはわかりません。
筆者様の日本代表に対する思いを感じ、自分がいかに現代表チームのポテンシャルを低く見ていたか気付かされました。
次の記事を楽しみにしています!!
コメントを投稿
[塾生]小山内隆- takashi_osanai
- 1971年生まれ、東京出身。サーフィン誌を軸に活動中。スポーツライターを目指して金子塾へ。最近のテーマは「東京を拠点とするチームにとっての地域密着とは?」です。
新着記事
書籍紹介
目標は「言葉」にすれば、必ず実現する。ブレずに強い心で戦い続けるための習慣。成功を引き寄せる、「有言実行」のメンタル術。
彼はその端正な外見だけではない。男らしい一面をもっている。誰よりも優しい心を持っている。そして、だれよりもサッカーに対して真摯だ。
『渡り鳥シリーズ』、『仁義なき戦い』など映画に出演し、『昔の名前で出ています』、『熱き心に』といった数々のヒット曲を生んできた小林旭。金子達仁が鮮やかに描き出す一冊。
ボールを追うのは3流、フォーメーションを論じるのは2流。 では、「本当のプロ」はどこを見ているのか?今日からできる「プロの観戦術」を初公開!
“美学”と“効率”が両立されている バルセロナのサッカーの本質に迫る一冊
『心は鍛えるものではなく、整えるものだ。いかなる時も安定した心を備えることが、 常に力と結果を出せる秘訣だ。自分自身に打ち勝てない人間が、ピッチで勝てるわけがない。』











