[塾生]三浦敬介
- コメント(1)
- 2010年5月25日
私たちの闘い
点差以上の完敗だった。
5月24日にW杯壮行試合として行われた日韓戦は、“ベスト4”などという崇高な目標を掲げている国のものとは到底思えないものだった。
飽くまでもW杯前の調整だ。
だから、日本代表はケガのリスクを回避し、球際の寄せは“寸止め”だった。
しかし、韓国は違った。試合開始直後から全力でガシガシきた。
W杯南ア大会に臨む韓国代表は国内では“史上最強”とか“ドリームチーム”などと言われているらしい。確かに、体の強さと足の速さはアジアではトップランクだが、技術的には、お世辞にもレベルの高いチームとは言えない。
普通に考えれば、ここまでの惨敗を喫する程の差があるとは思えない。しかし韓国の選手たちは、この試合に対するモチベーションが日本とは違った。現時点で決まっているのは代表候補30人に選ばれたということだけ。彼らは日本と戦うと同時に23人枠への闘いもまだ続いているのだ。
今回の惨敗はW杯本番に向けて2つの不安材料を浮き彫りにした。
1つ目は、中村俊輔の衰えだ。いつものように中盤の右にポジションを取った俊輔は、いつものように攻撃の起点になろうとした。だからこそボールを要求したし、他の選手も俊輔にボールを預けようとした。しかしボールが彼より先に進むことはなかった。判断の遅さ、球離れの悪さは目を覆うばかりで、俊輔は、もう昔の俊輔ではなかった。
彼がボールを持つと、「待ってました」と言わんばかりに屈強な韓国の選手たちが体をぶつけてくる。赤いスナイパーからの襲撃に遭った俊輔は、抵抗する間もなくもがき倒れる。前半、日本にゴールの匂いすら感じられなかったのは、俊輔のところでボールがストップしていたことが原因だった。
後半開始直後、岡田監督が動いた。俊輔を外したのだ。この直後から本田が仕切る中盤でボールが回り出した。“これならいける!!”スタジアムを埋め尽くした青いサポーターの声援が明らかに変わった。「政権交代」の瞬間が来たと受け止めたサポーターも少なからずいた。この試合の意味はこれだったんだ。“W杯本番の闘い方はこれだ”という岡田監督のメッセージをが発せられたと誰もが思った。
しかし、岡田監督が再び動いた。何と本田を外すという暴挙に出たのだ。俊輔を外したのは、「この瞬間から日本代表の王様は本田だ」というメッセージではなかったのか。
昨年のオランダ遠征の頃には“アーリークロス”という看板を掛け、今年に入ってロシアで本田がゴールを量産すると“本田の得点力に期待”と言う。そして今度は、点を取らなければいけない場面で、その本田を外す。この岡田監督の「ブレ」こそが2つ目にして最大の不安材料なのだ。
試合終了後、岡田監督は会長に進退伺を提出したという。何故本番まで1ケ月を切った今なのか。東アジア選手権で惨敗した直後には何故辞任を考えなかったのか。この期及んでまだブレる岡田監督は、最後には「ベスト4」という目標まで修正してしまうのだろうか。
1997年、ジョホールバルでの試合を実況したNHKの山本浩アナウンサーは、全力で戦う選手たちを“彼ら”とは呼ばず“私たち”と表現した。鬼気迫る名実況だった。南アフリカでの闘いは、間違いなく厳しいものになるであろう。結果として3戦全敗で日本に戻ってくるということも充分にあり得る。全力で戦ってくれるのであれば、それでもいい。
ただし、アナウンサーが選手を“私たち”と実況してしまうような闘いっぷりを見せてくれるのであれば・・・。
(三浦敬介=文)
コメント(1)
- kay2010年5月25日 5:44 PM
日本代表は「私たち」ですよね。良い時も悪い時も、一心同体であるべきだと思います。
彼らをサポートするのであれば、こうした考えは不可欠だと思います。試合に負けた、ワールドカップ直前に赤い悪魔に殺されて、瀕死の状態の彼らと私たちはそれでも前に進んでいかなければならない。すべてを失った選手たちに必要なのは、愛情しかないのだと思います。
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