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[トップリーグ]S席の風景
1月31日の日曜日の午後にあなたは何をやっていたのだろうか。
おしゃれな街へとショッピングに行ったかもしれないし、大切な人と遊園地で楽しんだかもしれないし、ただ家でごろごろ寝転んでいたかもしれない。休日だ。多くの人はその日に何をやろうと自由だ。
あなたは知っていただろうか。その日にラグビートップリーグの頂点を決める試合があった事を。
おお、S指定席だ。普段僕は自由席で見ている。なぜってお金がないから。学生でしかも東京在住でもない。今日だって前日の夜行バスで名古屋から来た。正直移動費でいっぱいいっぱいです。それが今日はここに記事を書くということで、指定席のチケットを頂けた。早めに行かなくたって自分の席が確保されているのはいい気分だ。バックスタンドの前方部分でセンターラインの真ん中あたりの席はともかくピッチが近い。
試合が始まる。タックルの迫力に圧倒される。選手たちが体と体をぶつける場面が間近で見られる。そしてその時発せられる音は自分の骨が軋む気がするほどリアルだ。選手たちが声を出し続ける。スローインの際に何やらサインのような数字を叫ぶ。その数字によって選手たちは動き、フォーメーションを変え、選手が1人ふわりと持ち上げられる。その一連の動きに惚れ惚れする。視覚と聴覚が刺激される。それが興奮を呼び込む。人と人が入り乱れる中、目の前で三洋の選手が東芝の選手に対しバックドロップをかました。ボールゲームでバックドロップが見られるなんて。試合前に年間で指定席を取っているという二人組みのおじいちゃんと話していたことを思い出す。これは格闘技だから。もうその通り。
試合は単純に言えば東芝が攻め、三洋が守った。東芝は執拗に自陣からボールを繋ぎ、三洋にプレッシャーをかけ続けるが、リーグ戦で最小失点を誇る三洋のディフェンスは瀬戸際でそれを跳ね除ける。東芝の選手から「辛抱、辛抱!」と言う声があがる。攻めている東芝が辛抱を強いられているのだ。それほど三洋のディフェンスはしぶとかった。
試合は6-0で東芝が勝利を収めた。攻め続けた東芝はトライを奪えなかったものの、ペナルティーゴール2本を確実に取り、後半30分からの三洋の最後の逆襲にも耐え、栄冠を手に入れた。
もし自由席で、あるいはテレビ観戦していたら、僕はこれほど興奮しただろうか。それは俯瞰で見ることができる分、ノートライゲームという結果にばかり目がいき、何も残らなかったかもしれない。あのピッチに漂う野生的な風景と匂いを感じることはなかっただろう。指定席の周りをぐるり見渡す。ポツポツと空席を見つけることが出来る。
あなたの席はまだ空いている。
●プロフィール
谷口徹(たにぐち とおる)
1988年1月生まれ。中京大学社会学部に在学中。大学4年生の現在、未だ就職活動中。年越し派遣村のニュースを見ると気分が落ち込む22歳。
タグ: スポーツライター登龍門 present by 「朝日日刊インサイト」, 日本一決定戦 —
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