review 書評
三沢光晴外伝 完結編
不思議な雰囲気を持つ本だった。
例えて言うなら、日曜の深夜、真っ暗な居間でテレビだけが煌々と点いていて、静かなブラウン管の中で三沢光晴が躍動している。
その三沢は言った。
「プロレスは鍛え上げた体と体のコミュニケーション。まず魂のぶつかり合いがあって、それから技がある。俺も熱くいくから、向こうも熱くくればいい。それで試合も熱くなって、お客さんも熱くなっていく。そういう熱い闘いがしたい。熱い熱い熱い…」
プロレスは、競技、ではない。
プロレスとロックンロールは似ている、と筆者は言う。ロックンロールは自由に音楽をデザインし、最終的な完成はないかもしれないが、パッションを最優先したポップ・ミュージックを作り続けることができる。
それと同様にプロレスはデザインできる競技、と三沢は言った。
「プロレスは自分が想像した技を出せる世界…それがあるから面白い」
対戦相手と、どんな試合を創り上げることができるのか。プロレスは、技術点と芸術点により評点がきまる。
プロレスというと八百長というイメージを持つ人は少なくない。第5章は三沢の八百長への反論で構成されている。しかし、本書を通してプロレスを見れば、三沢光晴という男を知れば、そんなことはどうでもよく思えてくる。
プロレスは果てしなき探求の道、芸術の道なのである。
少なくとも三沢は、そう考えていた。
(本田千尋=文)
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