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  • 2010年8月25日

アンチ・ドロップアウト

強く、美しく、しがみつく。
財前宣之、石川直宏、小澤英明、阿部祐大朗、廣山望、佐藤由紀彦、金古聖司、藤田俊哉、茂庭照幸、李忠成。
覚悟を決めた男達は困難で険しい回り道を今尚誇りを持って歩んでいる。

メディアは財前を天才と謳い、阿部の不世出の才能をもてはやし、向こう10年の日本のセンターバックを金古に託した。多くのサッカーファンの脳裏に浮かぶ記憶の先に、真の物語がある。
狂った歯車を組み直し、戻せない時間に抗う、長い長い戦い。
想像しがたい屈辱を、目をそむけたい現実を受け入れて、彼らはそれでもプレーヤーであることを選んでいる。財前はタイで、阿部は鳥取で、金古はシンガポールで。
彼らの言葉は重さと儚さ、逞しさと脆さを混在させたような強烈なエネルギーを放つ。


一味違う物語もある。
小澤英明。
J1の、王者鹿島のセカンドGKとして16シーズンを戦いぬいた。理想のセカンドGKとして自我を殺し、チームの為に戦った。そんな彼にチーム内外からの信頼は厚かった。
本人も自らの居場所を認めていた?・・・答えはNOだ。
認めるはずがない。
満足など決してしていなかった。
試合に出られず内面に溜まっていくドロドロとした黒いものをなんとか吐き出しながら日々を過ごした。最高のセカンドゴールキーパーと称賛されることそのものが自分の欠点だとも感じていた。自分との戦いが延々と続く。
正ゴールキーパーが負傷し、試合に出てビッグセーブを連発しても、正ゴールキーパーのコンディションが戻ればポジションを譲る。「チームの為」と大人の対応をしてしまう自分が嫌でたまらない。
家族の為、自分の為。
正ゴールキーパーとしての自分を見つけるため。
彼は今、日本のチャンピオンチームの慰留を断り、南米・パラグアイで戦っている。


道は高みへまっすぐ伸びているわけではない。
遠回り、障害・・・逆戻りすることすらある。
それでも歩みを止めなかった先にたどりつく答えがある。
当初思い描いたゴールとは違う、何か。


自身の道を振り返り、これからを歩む勇気をくれる一冊だ。

(石島啓太=文)


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