review 書評

  • 2010年4月1日

決戦前夜

 本書は、日本がワールドカップ初出場を決めた翌年の1998年2月に刊行された。98フランスワールドカップ予選の死闘と、当時の選手の生の声が克明に綴られている。以来12年の歳月を経て、今、この著書の意義を改めて感じる。なぜなら、ある意味、この予選の死闘から現在の日本サッカーの歴史が始まったといっても過言ではないからだ。もちろん、それ以前からも日本サッカーは輝かしい成果を残している。しかし、この予選ほど、日本の老若男女の誰もが熱狂的にテレビにかじりつき日本サッカーを応援したことはないこと、そしてこの予選に勝ち抜いたことで、初めてワールドカップに出場できたこと、さらに言えば、それがあまりにも劇的な幕切れであったこと。そんなことから、あえてこの予選を、日本サッカー元年と呼ばせていただきたい。そして、そんなサッカー元年の熱いドキュメントを綴ったのが、まさに本書である。

 しかし、本書の意義は当時の“熱さ”を感じさせてくれるだけではない。特筆すべきは、その記録としての重要性である。これも、先に述べたのと同様、誰もが簡単に手に取ることが出来るという意味でだ(身近にあるどこの図書館にもある)。一部のファン、専門家の扱う資料を手繰れば当然記録は入手できるだろうが、サッカーに興味のある一般の人たち、当時の予選を振り返りたい人など、誰もが簡単に、全試合の記録、戦況、そして選手の生の声を克明に振り返ることができる書は、他にないと思われる。あとがきを見ると、本書が刊行されるまでには相応の紆余曲折があったとのこと。今、本書が無事刊行されたことに、ほっと胸をなでおろしている。

 そして、開催せまる2010南アフリカワールドカップ。日本にとっては4度目のワールドカップとなる。今や我々は、ワールドカップも含めて、サッカーをよそさまの歴史としてではなく、自国の歴史として語ることができるようになった。世界史の教科書を学ぶのではなく、日本史を学ぶことができるようになったのだ。そして、その歴史を学ぶとき、良質のテキストが必要となる。本書はそのテキストの一書といえよう。

(橋本文成=文)

決戦前夜―Road to FRANCE
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review 書評, [塾生]橋本文成

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